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「はい。以前、飲み屋さんで知り合って、それから時々一緒に飲むようになったんです。弟みたいに可愛がってもらいました」
「そうかい。あいつは天涯孤独だったからな。可愛い弟が欲しかったんだろう」
急にしんみりとした声になる。
そこに組員がお茶を運んできたので、しばらく、僕の話になる。小学校の教師をしていることなんかを話した。
「極道の人間と小学校の先生か。面白いもんだな」
組長は豪快に笑った。
「で、話ってなんだい。まだ二宮の亡骸は警察なんでこうして時間が作れたが、あいつが戻ってきたら、葬儀の手配やら何やら忙しくなる」
葬儀の手配はいいけれど、“何やら”のほうが心配になる。報復の計画だったらまずい。
「実は、昨夜……」
僕は昨日、二宮さんと打ち合わせた通りに話を始める。
「二宮さんが僕の夢枕に立ったんです。『おやじに伝えてくれ。俺は殺されたわけじゃない。もちろん、自殺でもない。単なる事故だって。だから、報復なんて絶対してくれるなと』って」
「事件じゃない?」
「はい」
僕は、二宮さんが女子高生を助けようとしてビルから転落をしたことを伝える。
しばらく組長は黙ったままだ。
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