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夕回診を終えて医局に戻る道すがら、藤宮先生と遭遇した。
「あ、藤宮先生、お疲れ様です」
「……お疲れ様です」
藤宮先生はちらりと私を一瞥して、すぐに視線を外した。
「頼人くん、体調良好ですね。この調子なら、オペも予定通り……」
「そのことで、お話があります」
「?」
肩を並べて歩きながら頼人くんの経過を伝えていると、藤宮先生は私の話を遮るように口を開いた。
「今後、音無先生は彼の治療には関わらなくていいです」
「え……」
突然被せるように言われ、私は困惑する。その声はぶっきらぼうで、いつにも増して冷たい。
「……どうしてですか?」
(私、なにかミスした?)
頼人くんは少し不安がっていたけど、最後は機嫌が良かったし、その後の検査も速やかに行えた。
記憶の限りミスした覚えはないし、思い当たる節がない。
「彼は大した症例ではありませんし。音無先生はオペの助手だけで十分でしょう」
やはり、藤宮先生は機嫌が悪い。
「……でも、患者対応については佐伯先生から私もサポートに入るようにって……」
「でも?」
ぐ、と言葉に詰まる。口答え禁止、という約束だ。
「……すみません」
「今後、彼の病室へ行くのは極力控えるように」
(なぜ……)
「……分かりました」
今後、藤宮先生の指示をすべて聞くと言ってしまった手前、口答えはできない。
私は不満を抱きながらも、渋々頷くのだった。
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