石像の村と巫女

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 そんなある日、冒険者だという温厚そうに見える男が村へとやってきた。話してみた感じでは悪い男には見えなかったが、値踏みするように精巧な石像を眺めているのが気になる。巫女である私が村の長なのだが、男は私を軽く見ているのだろう。他に責任者は、などと言って村人たちを慌てさせている。  ため息を吐きつつ私が長だと告げると、大袈裟に驚き頭を下げた。どうも態度が気に入らないが、仲間と共に指定された危険生物を狩りに来たのだという。狩りは村のためにもなるため、ギルドとの取り決めで冒険者用の小屋を提供することになっているのだ。  形式的な挨拶を終え、冒険者用の小屋へと案内するよう伝えると、私は神へと祈りを捧げるために神域へと向かった。  神域の空気は澄み、体に心地よい気が巡る。それなのに嫌な胸騒ぎがするのだ。やはり、先程の男の視線が気になった。あれは冒険者というより、盗賊の類が持つ瞳だ。 「ねぇ、あなたはどう思った?」  常に私に付き従う、次代の巫女候補に尋ねる。賢く心の清い少女だ。神域の光を浴びた白い肌に朱色の複雑な紋様が浮き上がるのは、巫女の素質があるという徴だ。 「私は危険だと見ました」
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