かつて、大地は球体だった

4/4
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
今月のテーマ『オルタナティブ・ガイア計画の現在と今後の展望』 記者「皆様こんにちは。今回は、人類住環境研究所にお邪魔して、オルタナティブ・ガイア計画(以下、AG計画)の最新状況と展望について、担当の研究者の方にお話を伺おうと思います。それでは、よろしくお願いします」 研究員「よろしくお願いします」 記者「さて早速ですが、まずAG計画の概要について、この雑誌の読者の方々なら大抵ご存知かとは思いますが、あらためてご説明願います」 研究員「かしこまりました。さて、私がここで申し上げるまでもなく、大幅な気候変動と凄惨極まる核戦争により、この地球では、およそ地表で住むこのできない世界となってしまいました。そこで人類住環境研究所は、かつての美しい地球のミニチュア版を実験室内でつくり、やがてここから、第二の地球を人類の手で創造しようという、極めて壮大な計画でございます」 記者「まず、地球と同じ環境、すなわち地球のミニチュアを作ったというところがすでに驚きなのですが、そこに人類に極めて近い知的生命体が生活しているというのが、俄かには信じられないことです」 研究員「もちろん研究は一筋縄ではいきませんでした。まず、そもそもちゃんとした地球環境を保つことが大変でした。一分たりとも目が離せない状態が続き、ある程度放置しても大丈夫なシステムができたのは、本当につい最近のことです。考えてみれば当然な話で、自然科学という言葉が示す通り、科学と文明の進化とはすなわち、万物の法則を見出だし、言葉で説明するための積み重ねの歴史だったわけです。それが史上初めて、自然を創るという方向から研究をスタートさせたわけですから、そういう一面から言っても、これは大変に革命的な試みだったというわけです」 記者「いやはや、皆様の探求心には頭が下がります」 研究員「この研究の根底には、『ただ自然環境を創るのではなく、我々人類と同じ過ちを繰り返さず、素晴らしい歴史を歩んで行って欲しい』という切なる願いが込められています。我々人類が犯したこの大きすぎる過ちを、最早無かったことにすることはできません。これを清算するには、我々の代わりとなる別の人類に歴史をやり直してもらうしかないのです。謂わば、本来あるべき、あるはずだった自然と人間の姿を神に託し、贖罪をするため、我々自身が神に代わって天地創造の仕事をしているようなものですかね……」 記者「……ちょっと待ってください。では、この研究の目的は、全く新しい知的生命体社会を創ること、なのですか?我々人類が次に住む世界を造るためではなく?」 研究員「いいご指摘です。先般政府が発表した声明、あれは、我々人類が生きていく今後の展望を大まかに示したものですが、決して全人類の生命を保証するものではなく…… (これより先は、暫定世界政府発行の文化享有配給券を所有の方、又は「生存不能地域における決死作業従事の誓約書」を政府に提出済の方のみ購読可能です)
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!