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天沢さんはとてもスマートだ。哲也とは大違い。 哲也――あれから音信不通になっている。 七菜に対して軽い行動をとった事がどうしても許せないし、そもそも「もう会えないから」じゃなくて、「もう会わせない!」だ。とにかく勘違いしないで欲しい。 今もきっとあの母親の言う通りにしているに違いない、そう思うとこの上なく腹が立った。  ***** 智美との食事の日。 七菜の事は実家の母へ預けた。久しぶりの孫に喜んだ顔を見せ、「ゆっくりしてきなさいよ」と言葉を貰ったので感謝しかない。 待ち合わせは最近できたワインバーだ。涼子は飲む気満々なのか、珍しくゆるっとしたパンツ姿で来ていた。いつもはタイトな格好なのに、新鮮だ。 「もう来るかな?」 「あ、あれじゃない?」 お店の前で話しているとすぐに智美と思わしき人物の姿が見えた。ふわりと巻き髪を上品に揺らしながら、こちらへ早足でやってくる。フレアスカートがとてもよく似合っていた。雰囲気が学生の頃から変わってない。 「お久しぶりー! 莉子! 涼子! 元気してた?」 「元気だよー」 「急に連絡くれた時はびっくりしたよー」 3人で店内へ入ると案内された席で話に花が咲いた。大輪だ。空白の数年間がまるで嘘のようによく喋った。 「でね、莉子の結婚の事を知ったのはうちの旦那の取引先が【あやなみ】 だったからなの! びっくりしちゃってさ」 「そうなんだ?」 「で、ずっと連絡取りたいなって思ってたんだけどなかなか勇気が出なくて」 3人は白ワインをボトルで頼んで好きに飲んだ。ツマミはカルパッチョとチーズ、パスタも頼んだ。 「わかるわ。……ね、智美もなんか悩みがあるんだって?」 莉子が訊くと、それまでペラペラと喋っていた智美は急にシュンっとなり、覇気がなくなった。 「どーした?」 「なになに? なんかあったの?」 「んー、実はさ……離婚しようかと思ってて」 「え!?」 莉子は驚く。離婚というワードに。いま、旦那って言ったばかりなのに……。 ……自分だけじゃないなんて。 「子供は?」 「一人いる。その……相談したくて二人に会いたくなっちゃってさ」 智美はワインをぐいっと飲むと、自らの近況を語り出した。 「まだ結婚してそんなに経ってないのにさ、彼の浮気が分かったんだよね」 「……そうなんだ?」 同情しかない。莉子は眉根を下げた。涼子は相変わらず肩肘をついてチーズを貪っている。 「最初はまさかって思ったんだけど……GPSをつけたのね。車に」 「えー!」 GPS!? 「一週間経たないうちにホテルに行ったのよ。彼。居てもたってもいられなくなって……そこに行ったわ」 「そこって……ラブホ?」 まさか。 「うん」 そう言って智美はスマホを出した。可愛らしくピンクゴールドのカバーだ。一枚の写真を画面に出して莉子と涼子の前にすっと出した。
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