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その人は、淡いピンク色のワンピースとグレーのカーディガンがとてもよく似合っていた。 「こんにちは」 にっこりと美桜は挨拶をした。 小さな顔に細長く白い首筋。髪を低めの位置におだんごでまとめており、可愛い雰囲気の子……いや、後れ毛がこなれ感を醸し出しているなと莉子は観察する。 なんとなく、男受けしそうな子だ。 「美桜・・・」 「隼人さん。来ちゃいました」  声までもが、鈴が鳴るように可愛らしい。 「奥様、はじめまして。佐藤と申します」  ぺこりと挨拶をして、潤んだ目で隼人を見つめた。 「来ちゃいけない……来ちゃダメだろ。ここは俺がなんとかするって言っただろ」  隼人は明らかにうわずった声を出した。 「でも、心配だったんだもん」  美桜は、まるで子猫のようなまあるい目をして隼人を見つめる。その様子に智美は小さく嘆息した。 「隼人、お呼び立てしたのは私なの。どうしてもあなたの本音を聞きたかったの」  智美はティーカップを戸棚からだしながら穏やかな声で話しかける。 いったいどうするつもりなんだろう? 「彼はどうしてもあなたとの関係を話してくれないの。だから困ってるのよね。あなたからお話聞けないかしら?」  莉子は、急に智美の一挙手一投足が怖くなった。智美の顔にはなんの表情もない。なにも見てとれない。貼り付けられた笑顔だけ。 「はい」  これに対し、浮気相手は意気揚々した声を出した。 「私が入社してからずっと支えてくださった上田隼人先輩には感謝しています。奥様がいると知りながらも好きになりました」 「隼人はどうなのかな?」  完全に固まっている隼人は微動だ出来ないようだ。 「先輩は奥様と別れるって言ってます。私のことが何より一番だと。なので別れて欲しいんです」  涼子と莉子は、目をひんむいた。 「美桜、そのことはちょっと待って欲しい」  瞬間、思ってもみない展開に涼子が吹き出す。  だめだめ! 莉子がそれを目で牽制する。 「どうして? 子供も奥様のことも要らないって言ったじゃない?」  詰め寄る美桜は、恋する少女そのまま。
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