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 哲也といた時、自分もそうだったと回顧する。  本音なんかいつのまにか心の奥底に埋もれてしまって、何が正しいか分からなくなった時期があった。  智美にも時間が必要なんだ。きっと。 「今日は本当にありがとう。ごめんね」  声を詰まらせながら言う智美。 「何言ってんのよ! 全然迷惑じゃないよ。いつでも頼ってくれていいから」 「そうよ。やるべきことが山積みだろうけど、落ち着いたらまた会おうよ」 「……うん。ありがとう……」  そう言って、彼女は泣いた。  きっと大丈夫。  智美にも子供がいるから。  私がそうだったように、きっと前を向いてけるはず。三人で抱きしめあった。  その日はそれで帰途につく。 涼子は相変わらず怒ったような目をして歩いていた。   「涼子、新しく始めたヨガはどう?」  住宅地を出て、国道沿いに歩きながら莉子は喋りかけた。  涼子は体を動かすのが好きだ。常に体を引き締めて、美容も欠かさない。 「ヨガ? うん。楽しいよ」 「そうなんだ。どんな先生なの?」 「んー、きちんと資格を取ってる先生でね、生徒も若い人が多い教室なの。けっこうハードかも。雰囲気はいいよ」 「そっか。ヨガってみんな資格が必要じゃないの?」 「ない人もいるんだよね。でも、うちの先生は全米の資格持ってるって」 「全米!? 凄いんじゃん!」  なんだか詳しくは分からないけど。 「そうなんだよね。こうなんていうか、しゅっとしてて、気が付かないところにも筋肉がついてて姿勢が本当にきれいなのよ」  こういうことになると涼子の喋りは止まらない。機嫌がよくなるように話を持っていきながら、二人で焼き肉屋へと入った。  涼子曰く、腹が立ったときには焼肉なんだそうな。 「ハラミとタン塩、それからビビンバも」  座席に案内されると、涼子はさっそく好物を頼む。莉子もカルビを頼んだ。 「ねえ、あの美桜って子、どう思う?」  お水をごくりと飲むと、涼子は眉間にしわを寄せた。 「若いよね。ほんとに何も考えてない感じがした」 「智美の旦那さん、どうかしちゃってんじゃないの?」 「……それほど追いつめられたか? の、どちらかよね」 「追いつめられた?」 「うん。私も今回のやり取り見てて、自分はどうだったかなあって振り返っちゃった」 「……というと?」  卓上に並んだ数種のタレを眺めながら、莉子は重い口を開く。
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