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最後にきたデザートは、金木犀の香りがするシャーベットだった。そして少しの焼き菓子。大人は珈琲にして、七菜にはハーブティーを頼んだ。どうしても飲んでみたいというから。 カモミールティーだが、七菜は洒落た茶器を見た時とても嬉しそうな顔をして、一口飲むと、途端に眉根を下げた。 「なんか変な味ー」 「これは体にいいんだよ?」 「でも甘くない」 「甘いと思ったの?」 「うん」 「そっか。じゃあ七菜ちゃん、他の飲み物にしたら良かったかな?」 「ううん。私は今日、大人になる日だから、飲むの」 どうやら、背伸びをして大人二人に混じりたいようだ。 莉子は、笑い混じりに天沢へと向き直った。 「天沢さん、どれもすごく美味しかったです。本当に。ラヴィオリって、初めて食べました。中にお肉とお野菜が入ってるんですね。パスタなのに」 「そうなんだよね。パスタってひと口に言ってもたくさんの種類があるよね」 「平たいやつとか?」 「そう。面白いよね」 天沢はそれ以上のウンチクを語る事なく、自然と七菜とのお喋りを楽しんだ。 ああ、これってすごく幸せかもしれない。莉子はそう思う。こんな思い出はきっと一生の中で一度きりだ。なんて良い日なんだろう。七菜もずっと笑顔で楽しそうにして。 「あの、天沢さん、今日はありがとうございました」 「え? 何が?」 「……こんな美味しいお料理を一緒にいただけて、なんて言ったら良いのか……」 「大袈裟だな。たかだかフランス料理だよ」 「天沢さんにはたかだかでも、私にとってはすごい経験なんです」 「そっか。じゃあ、次は清川さんの知ってるお店に連れて行ってもらおうかな?」 「え?」 天沢は凄く嬉しそうに目を細めた。笑うと少年みたいになる。 「私の知ってるお店で良かったら……」 「ほんと!? じゃあ次はそこで」 本当にいいんだろうか? 私の知ってるお店って、よく行くのは焼肉屋でホルモンとか、ラーメンとか……七菜とはファミレス。あとは、回転寿司……そんな所に行った事あるんだろうか? 天沢さんは? 「楽しみにしてるよ」 「え? は、はい!」 受けてしまった……。 「焼肉とか好きですか? えっと……ラーメンとか食べたりします?」 「ん? ラーメン好きだよ」 「え? 本当に!?」 この顔でラーメンをすするのか。見てみたいと莉子は興味が湧いた。 「じゃ、今度美味しいラーメン屋に行きましょう!」 「いいね!」 「七菜も!」 嬉しそうに七菜も混じる。
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