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02
「どのようなお花がよろしいですか?」
「あー、お見舞いなので病院へ持って行きたいんです。美紀は……あ、妹なんですけど、花粉にアレルギーがあって。でも花が好きなので持って行ってやりたいんですけど、そういうのは無理でしょうか?」
「花粉にアレルギーがあって、病院ということならプリザーブドフラワーなどがいいですが……。今日すぐにお持ちになりますか?」
「はい。これから行こうかと思ってるんですけど。その、プリザー何とかっていうのは、すぐに作れる感じですか?」
少し首を傾げるように聞いてくる男性を見て、かわいいと思ってしまった。親しみのある様子はやはり似ている。
「特殊な溶液につけて作るので、お時間を頂く形になってしまいます。ただ最近は病院へプリザーブドフラワーを持って行かれる方が多いので、うちでもサンプルを作っているんです。枯れにくくて色褪せもしないし、花粉も飛ばないので喜ばれますね」
そういえばこの間サンプルを作った。ホームページに載せる写真を撮るためだったが、それが終われば店内に展示しようと取っておいたものがあることを思いだした。
「あ、ちょっとまってくださいね」
店の中へ戻り、レジ奥の棚に乗せてある小さなドーム型のアレンジメントの籠を手にした。チューリップ、カーネーション、ローズ、アジサイ、ストーブ、ユーカリをバランスよく配置し、フェイクのパールで飾ったものだ。ベースはピンクでかわいらしくまとめてある。
「あの、これ、サンプルで作ったんですけど。完成してしまっているのでお花を選べないですが、もしも嫌でなければお持ちになりますか?」
「えっ、でもいいんですか? 普通の切り花とかよりも色が鮮やかだし、値段も高いんじゃ……」
「見舞い用の花代で結構ですよ。サンプルで作ったものだし、妹さんに気に入ってもらえないかもしれないですから」
恋人に似ているという親近感から、彼の希望に応えたいと思った。いつもの藤崎ならここまでしたかどうかは分からない。ゆっくり差し出した籠を、男性はおっかなびっくり受取った。
「うわ、これ軽いんですね。もっと重いかと思いました。それに繊細だ」
「ええ。土を使っているわけではないので、とても軽いです。水をやる必要もなく、病院などでは衛生的ですよ」
「へぇ。じゃあ、これを頂けますか?」
「は、はい。ありがとうございます」
微笑んだ男性の笑顔に胸が弾んだ。頬が熱くなって恥ずかしさがじわじわと滲んでくる。
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