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10月1日、25歳の誕生日 夜
「お前、誕生日当日の夜に何でそんな格好なんだよ?」
オーバーサイズのシャツにデニム、スニーカーで待ち合わせの駅に行ったら、先生が不機嫌な顔で私の格好に文句を言ってきた。
「だって今日は日曜日ですし。
先生こそ日曜日なのに何でスーツなんですか?」
「お前っていつまで経ってもガキだよな、可哀想な奴。」
「誕生日当日くらい優しい言葉とか出てこないんですか?」
「お前が大人の女になった時には出てくるかもな。」
先生が楽しそうに私のことをバカにして、「ちょっと待ってろ。」と言ってスマホを片手に私から離れ電話を掛けていた。
お洒落な街並み、日曜日にこの街に集まっている人達もお洒落な人ばかりだった。
そんな人達の中でも先生は別格で。
スーツを着てしっかりとセットされている髪の毛、そんな姿でスマホで電話を掛けているだけなのに絵になった。
悔しいくらいに絵になっていたし、気取っていて嫌な男だなとも思った。
そう思いながらロングカーディガンを羽織った。
もう10月1日、夜になると羽織るものが必要になってきた。
「何食いたい?」
電話を終えた先生が私に食べたい物を聞いてきた。
それには小さく吹き出しながら文句を言ってしまう。
「私が食べたい物を言っても食べさせてくれたことないじゃん!!
答えるのも面倒だから今日も先生が食べられそうなお店でいいから。」
「俺は大人だぞ?
誕生日の人の食べたい物に付き合えるくらい大人だからな?」
「大人なら好き嫌いなく食べなさいよ。」
「好き嫌いの問題じゃねーよ、味付けの問題。」
「舌が老人過ぎて付き合い切れないんだけど。」
文句を言いながら私が歩き出すと、先生も私の隣に並び歩き始めた。
「老人は失礼だろ!!」
「それはそうだね、老人でももっと色々食べられる人もいるし。」
「俺だって最近は色々食べられるようになってきただろ!?」
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