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翌日、9月末日
「「あ。」」
出社し自分のデスクに向かうと、隣の席に座っていた佐伯さんと声が重なった。
佐伯さんは開いていたパソコンの画面をチラッと見て、そして私のことをバカにしたように笑った。
「そっか、今日も松戸先生が来るんだ。
折角その似合わない格好をしてきたのに可哀想に。
まさかの私と同じワンピースになるなんてね。」
そう言われ、私は自分のワンピースを見下ろした。
結構お高いブランド、お姉さんブランドのワンピース、秋の新作で濃いブラウンのワンピース。
「顔の系統的には間違ってはいないけどね、ちゃんと似合うようにお化粧もしてるし。
アナタ単体で見たら可愛い女の子に見えるだろうけど、隣に私がいて可哀想に。」
佐伯さんは本当に“可哀想”という顔をしだして、自分の首元に両手を持っていった。
「ボタン1つじゃなくて3つくらい外しておけば?
胸の谷間をチラッと見せてみるとか。
・・・あ、もしかして谷間ない?」
「・・・めっっっちゃ性格悪い!!!
そんな重そうな胸をいつも隠してて自意識過剰だし!!
胸の谷間、あせもだらけなんじゃない?」
「ちゃんとケアしてるから!!」
「その胸誰には見せるの?
佐伯さんって今彼氏いるの?
社内の男の人達の誘いを全部断ってるらしいけど。」
「アナタこそ彼氏作らないの?
国光さんソックリの顔でまだ松戸先生に頑張るつもりなの?
そんな無謀なことをしてないで早く次にいきなさいよ、早く彼氏作りなさいよ。
私が男を紹介してあげようか?」
「先生からはカヤのお姉ちゃん・・・あ、私の友達のお姉ちゃんが国光さんなんだけど、国光さんとソックリとは言われたことないんだよね。」
「・・・え、じゃあアナタの友達が松戸先生の従妹でもあるっていうこと?」
「そうだよ?」
「アナタね~・・・相手が松戸先生で更に9歳も年下で只でさえ望みが薄いのに、従妹とソックリの顔で従妹と同じ年の女とあの松戸先生がわざわざ付き合うわけないでしょ~。
そんなの少し考えれば分かるでしょ、どれだけ気が強いの?」
「でも・・・私って定食屋の娘だから料理は上手なんだよね。」
「そんなこと言ったら私だって母子家庭だから料理は上手な方だけど。」
「佐伯さんはめちゃくちゃ性格悪いから美味しいご飯なんて作れないよ。
食べた人に“美味しい”って言わせようとする料理だって、食べた人もきっと分かるもん。」
「私が性格悪いことくらい自覚してる。」
佐伯さんが物凄く悪い顔をして私のことを見てきた。
物凄く悪い顔で・・・でも、あまりにも可愛くて綺麗な顔をしているから、その笑顔に引き込まれてしまう。
「私って、めちゃくちゃ性格悪いんだよね。
早く諦めさせてあげる。」
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