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そう言って・・・ 私に、そう言って・・・。 私と同じワンピースを着ている佐伯さんの身体をしっかりと支えながら・・・。 佐伯さんのめちゃくちゃ良い身体を抱き締めるように支えながら・・・ ちゃんと手入れをしているだろうスーツに佐伯さんの顔をもたれ掛けさせ・・・ 先生は佐伯さんといなくなってしまった。 打ち合わせを延期させてまで。 先生にしか身体を見せたくないと言った佐伯さんの言葉に“分かった”と答えて。 「知り合いだったの・・・?」 私だけではなく佐伯さんも先生と知り合いだったらしい。 佐伯さんからも先生からもそんなことは一言も聞いていなかった。 先生は何も言っていなかった。 言っていなかったけれど・・・。 佐伯さんばかり見ていた・・・。 毎日のように佐伯さんのことを聞いてきた・・・。 “23と32なら全然アリだろ・・・。” この前の初めての打ち合わせの後、先生はそう言っていた。 そう言っていた。 「全然アリだよね・・・。 今なら全然アリだよ・・・全然おかしくないよ・・・。」 おかしいどころかめちゃくちゃ絵になっていた2人。 ムカつくくらい絵になっていた。 「今日の夜も・・・来てくれるのかな・・・。 明日も・・・明日・・・私、23歳の誕生日だ・・・。」 あんな感じになった2人はこれからどうなるのか。 私も23歳になるからある程度は想像してしまう。 ある程度は想像出来てしまう。 「朝人・・・。」 佐伯さんと並んでも絵にならなそうな“朝人”の名前を久しぶりに口から出した。 “朝1番”に帰ってくることはなかった“朝人”の名前を。 「明日、私23歳になるよ・・・。」 誕生日の朝は毎年頭を撫でてくれていた“朝人”の全然イケていない姿を思い出し、“朝人”に会いたくなった。
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