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──────────── ───────── ─── 「色々と勘違いしてたのが分かって。 福富さんって松戸先生のことが今でもまだ好きなんだね。」 「・・・なんで?」 「そんなに怒った顔しないでよ。 ごめんね、色々と勘違いしてた。 私、松戸先生とエッチしまくってないから。」 その言葉には更に驚き、佐伯さんの物凄く可愛い笑顔から目を離せない。 「私の具合が悪くなった時に関西にある病院に付き添ってくれたけど、本当にそれだけ。 翌日に松戸先生と松戸先生のお母様と3人でランチはしたけど、帰りも別々だったから。」 「でも・・・でも、朝人は・・・松戸先生は佐伯さんのことが凄くタイプだよ・・・。 だって、松戸先生・・・あの時・・・」 「ちょっと、大丈夫? そんなに様子がおかしくなってる所初めて見た。 この前の泣いた時よりもおかいしよ?」 「だって・・・あの時・・・」 “あの時”、先生は同じワンピースを着ていた佐伯さんのことを選んだ。 その日の夜も次の日の朝も、そして私の誕生日の夜も来てくれなかった。 先生は私の23歳の誕生日の日に“おめでとう”と言ってくれなかった。 23歳の時だけじゃない。 24歳の時もこの前の25歳の誕生日も、先生は私に“おめでとう”と言ってくれなかった。 私は違う・・・。 私は全然違う・・・。 先生はあれからまた私の実家で朝ご飯も夜ご飯も食べるようになっていたけれど、佐伯さんのことを何も言わなかった先生に私から佐伯さんとのことを聞けなかった。 でも、佐伯さんは先生に全く興味がなさそうで安心もしていて。 先生だけが佐伯さんのことがタイプなのだろうと思っていて。 先生は土曜日も仕事だと言って出勤していたし、日曜日もたまに仕事で、更にはうちの1階でずっと仕事をしていることもあった。 彼女はいないとよく言っていたし、うちに泊まるようになったここ1年も日曜日はずっとうちでゴロゴロとしていた。 佐伯さんとエッチしまくっていたと知った時は、仕事終わりにしていたのかなとか、その後にうちに来てご飯を食べていたんだなとか、そんなことを考えてめちゃくちゃ悲しかったしめちゃくちゃムカついていた。 でも、今はそれよりも・・・ 「私と松戸先生、何もないからね?」 私の様子が変だからか珍しく佐伯さんが焦ったような顔をしている。 「大丈夫?具合悪い?気持ち悪い?」 「じゃあ・・・じゃあ、私・・・本当に違うんだ・・・。 全然違うんだ・・・。 佐伯さんのせいとかそんなんじゃなくて、私のこと、本当に違うんだ・・・。 佐伯さんとエッチしたから私とエッチ出来ないんじゃなくて、私がこんなんだからエッチすらも出来ないんだ・・・。」 あの日から先生に“付き合いたい”や“好き”や“エッチしたい”と言わないようにしていた。 どうせあしらわれるだけだと分かっていたし、佐伯さんとの時と違う先生の態度に悲しくもなるから。 先生は私の前では全然外面にならない。 それがずっと嫌だった。 私のことを大人の女として見てくれていないからだと思っていた。 だから熱が出て先生から身体を触って貰い終わりにしようとしていた。 でも、“朝人”とも再会出来てカヤから“ガキ”の意味を教えて貰い、私はまだ頑張ろうと思った。 まだまだ全然頑張れると思った。 佐伯さんとエッチをしまくっていたと知っても、私はやっぱり先生のことも朝人のことが好きだと思って。 だって、先生だけだった。 社会人になってから私の名前を呼んでくれる男の人は先生だけだった。 先生と朝人だけだった。 「福富さん。」 頭の中で色んなことがグチャグチャになっていたら、羽鳥さんのめちゃくちゃ冷静な声が私を呼んだ。 「何がどうなってそんなことになったのかは分からないけど、松戸先生って福富さんのことが大好きだよ?」 「それは・・・私の作るご飯が朝人は大好きだから。」 「こんなことを私から言うのもよくないとは思うけど、松戸先生って福富さんが高校生の頃から福富さんのことが大好きらしいよ? どこをどう見てもそう見えてたらしいよ?」 そんな羽鳥さんの言葉には驚いていると・・・ 「うちのもう1人の担当に安部さんがついたでしょ? 安部さんって福富さんの同級生だよね? 安部さんが言ってたよ?」 羽鳥さんがそう言って・・・。 佐伯さんがクスクスと可愛い顔で笑い始めた。 「松戸先生ってロリコンじゃん。 そんなオジサンとアナタをくっつけるのは惜しい気持ちにもなるけど、私の10年前みたいな顔でいつまで経っても幸せになれない姿を見てるのも見てられないから。 だから早く行ってきなよ、ちゃんと話してきな。」 羽鳥さんも佐伯さんも私のことを見詰めてきて、そんな2人に頷いてから・・・ 私は勢いよく立ち上がり走り出した。
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