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シャナの言葉に、マーニは眉を上げて周囲を見渡した。普段は使わない花瓶や大きめのグラスに片っ端から花が入っている。カウンターの端には菓子の包みや籠が小さな山になっていた。
贈り物の山を見て黙りこくっているマーニに、シャナは声をかけた。
「マーニ、それはぼくだけにもらったわけじゃないよ。皆、マーニのお客さんなんだから」
二人でどうぞ、と言われたものも多いとの言葉をマーニは聞こうとしなかった。
マーニが右手を挙げると、さっと使役鳥が飛んできた。指に止まった鳥は黄金色に輝いたかと思うと美しく鳴く。マーニの眉間にどんどん皺が寄った。
「ツゥラは今まで渡していた薬を半分に。……は、今後立ち入り禁止だ。リリーベル……!」
シャナはリロリロと鳴く鳥の声が止み、マーニの手の中で苦しそうにもがいているのを見た。
「マーニ! 鳥が」
魔術師は手の中を見てはっとした。鳥の見聞きしたことを読み取りながら、知らず知らず力を入れすぎていたことに気づく。
「大丈夫だ、シャナ。心配しなくていい」
くったりした鳥はマーニの手の中で少しずつ元気になって、ぱたぱたと翼をはためかせた。
「あのね、マーニ。リリーベルが綺麗なお花をたくさんくれたんだ。焼き菓子もあるんだよ。……だから、あんまり怒らないであげてね」
心配なことがあると、瞬きが多くなるのがシャナの癖だ。じっと自分を見つめて瞬きを繰り返す大きな瞳に、マーニは勝てなかった。
「もちろんだ、シャナ。折角だから、その焼き菓子を一緒に食べよう」
「うん! あのね、他にもお菓子をたくさんもらったんだよ。すぐにお茶を淹れるね」
「ああ。菓子をくれた客の名は覚えているか?」
「うん、もちろん!」
マーニは笑顔を絶やさずに、可愛い拾い子の後ろ姿を見つめた。シャナに色目を使った者たちを、次々にリストに載せなければならない。シャナとお茶を飲みながら魔術師たちの何人かは即座に店への出禁を決めたが、リリーベルの始末は改めて考えることにした。
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