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かすかに
にぎやかな声や音楽が聞こえてくる。
香ばしい、焼きそば、たこ焼き……
自然と目尻が下がってくる。
「わたあめ……?」
キコが早速食いついたのは、
わたあめだった。
「結構混んでるね。」
「まあ、大きめなお祭りだしね。」
私たちの前にずらっと並んでいた子供たちを
キコは楽しげに見守る。
「キコ。午前中は何したの?」
「えっとね、いっぱい料理食べたり、
みんなが思い出を話してくれたりね。」
キコは思い出してニヤニヤしながら歩く。
キコはちゃんとお金を用意していたらしく、
タオルを巻いたおじちゃんに渡していた。
棒に巻かれた真っ白いわたあめ。
キコは目を輝かせる。
「何これふわふわっ!甘くて美味しい!」
ニコニコとしているキコに
目尻がまた下がる。
「一口あげるよ。」
私は、ひょいとつまんで、
ありがとう、と言う。
わたあめはすっごく甘くって美味しかった。
キコはわたあめを
ぺろっと食べきって、歩く。
キコは私の手を離すつもりはないらしい。
人混みをすり抜けながらも
キコはゆっくり歩いてくれた。
キコはいつも着物みたいなやつだったから、
着慣れてはいるはずなのに。
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