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夏目漱石の言葉
「あらゆる芸術の士は
人の世をのどかにし
人の心を豊かにするがゆえに尊い」
『草枕』の冒頭の一節で
漱石は そう語っている
誠に その通り!
あまりに 的を得た言葉で
目新しさは感じないだろう が
先に述べた 明治天皇の御製
めにみえぬ
神のこころに かよふこそ
人の心の まことなりけれ
と 相通じる志 と 言えよう
文芸に限らず 音楽も 美術も
映画や演劇等 あらゆる芸術は
人の世をのどかに
人の心を豊かにするがゆえに尊い
のであり
そうした結果をもたらさない芸術は
尊くない のは もちろん
芸術としての価値を有しない
と 暗に彼は そう言っているのだ
つまり僕ら作家を目指す者は
どのような作品を書く場合にも
その作品が 世の中に広まったなら
世の中はのどかになり
人の心は豊かになるか
という点を 最重要課題と考えて
書き進める姿勢が 理想なのだ
闇雲に 人心を乱し
世の中を不安に陥れるような作品は
芸術 とは呼べない と 僕は思う
だが 芸術と呼べないような作品を
書いてはいけない という道理はない
人心を攪乱し
世の中を不穏にする作品であっても
一世を風靡する問題作 は
その時代の
重要な問題点を 浮き彫りにして
次世代に問い掛ける意義を有する
社会的意義の有無と
芸術としての価値とは
何の関係もない 別次元の話である
昨今の傾向としては 芸術か否か
という 曖昧な価値よりも
具体的で 実際的で
社会的歴史的な価値を持つ文章や
映画や動画が もてはやされている
国民の大多数
すなわち 大衆が 容易に理解し
興味本位で時間をつぶせる作品は
どの国の どの時代にも 存在した
わかりやすい題名 容易な言葉
心情に即した 具体的 感情的表現
そんな作品の中にも 稀に
後世に残る秀作は存在する
だが流行り物の大半は 次々に出現し
文字通り 流れて消えて行く
それでいいのだ と 思う方 は
それでいい
だが 夏目漱石の 言う通り
芸術 を 志すならば
一作品 で よい
人の世をのどかにし
人の心を豊かにする
そんな作品を 生み出してみよう
難しいことだ
けれども初心を忘れず
そんな作品に
果敢に 挑み続けようではないか!
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