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明治天皇の御製 3
大空に
そびえて見ゆる たかねにも
登ればのぼる 道はありけり
どんなに困難と思われる
崇高な目標であっても
勇気と たゆまぬ努力によって
道は開けるだろう との 大意
登山が趣味の僕は 実際に
高い山に登る前には
非常に緊張する
何か月も前から
筋トレや有酸素運動で
身体的に十分すぎる準備を 整え
同時に 精神的な充足とゆとりを
積み上げてから 挑戦する
精神的に充足しているだけではなく
ゆとりを持つことは
ある意味 身体的なゆとり以上に
山では 重要な意味を持つ
山の上で 一瞬でも判断が遅れたり
判断を間違った場合は
即 死に直結するのだ
たとえ目前に 頂上が見えていても
風を読み
即刻 引き返す場合もあり得る
また 岩陰に留まって時を待つ
という状況も あり得るだろう
そうした鋭いアンテナを張り巡らせ
同時に 山の風景を楽しみながら
時間と体力と 天候と 所持品と
相談しながら 計画的に登り
下りて来なければならない
例えば 富士山のような
途中で 緊急事態が発生しても
他の登山者がいて
途中 宿泊施設や医療施設もある
という 文化の行き届いた山は
北海道には 一つもない
北海道のほとんどの山は
例え百名山に数えられている山でも
万が一 自分が骨折して倒れたら
電波の届かない場所がよくあるし
ヒグマが生息していることは確実
もちろん 他の登山者が
誰一人 通らない可能性もある
そんな危険な山に なぜ登るのかと
友だちや家族さえ あきれている
だが それは・・・
大空に
そびえて見ゆる たかねにも
登ればのぼる 道はありけり
まさに その思いを
人生を通して 成し遂げる
大きな仕事を 完遂するためにも
その縮図 のような体験として
登山という方法で
人生哲学を反芻してみたいのだ
作家道は まさに
大空に そびえて見ゆる
高嶺 に 相違ない
登る道を見つけられる保証はなく
途中 どんな災難に出くわすか
予想することさえできない
死ぬ前に どこまで辿り着けるか
山のすそ野で 野垂れ死にするか
それすらも危ぶまれる
それでも僕は 心身共に準備して
登山を繰り返しているように
心身共に準備して
同時に ゆとりを持って
作家道 に 挑み続けたいと思う
ゆとりを失った作家たちは
精神衰弱に陥ったり
病気に倒れたりして
前ページにあるような
「人の世をのどかにし
人の心を豊かにする」
作品を生み出しつつも
周囲の家族に迷惑をかけたり
ファンを悲しませたりしてしまう
太宰や芥川のように
病気や事故で早死にしても
それくらい熱心に創作活動に励み
命と引き換えに有名になれるなら
それも 一つの生き方ではないか
などと 若い時には考えた
しかし 今 僕は
決して そうは考えない
どんな平々凡々たる生活を送っても
健康で長生きできる生き方が
もっとも豊かな生き方だと 確信する
たとえ本人の芸術作品が
その愛読者の心を豊かにしたとして
家族や友人の心を悲しませるようでは
結果として
「人の世をのどかにし
人の心を豊かにする」
という 芸術の 志 を
果たしたことにはならない
僕は 作家を目指す すべての方々に
心から訴えたい
自分の身近にいる人々の心を
豊かにしよう と 努力せず
日常の現実 を 直視せず
自分自身の健康促進にすら努力せず
口先だけで 人の心を豊かにする
芸術作品など 書けるのか?!
本当に 心から 人の心を豊かに
世の中をのどかに と 願うなら
真っ先に 身辺の人々への 愛を
具体的に実践すべきではないのか
目の前 の 人間 一人
幸福に 豊かにできない 自分の
深刻な葛藤と 反省と 努力と
挑戦し続ける 気迫と 情熱とが
作家としての自分を燃やす
薪になるのではないのか?
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