女神サマが欲しい物!

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女神サマが欲しい物!

 異世界、イグノアは危機に瀕していた。  雨を司る女神様がいじけてしまい、洞窟の中に引きこもってしまったのである。  彼女が出てこないと、イグノアに雨は降らない。このまま日照りが続けば、人類も魔王もモンスターもみんな乾いて死んでしまうことになる。 「仕方ない、一時休戦だ」 「そうだな」 「そうね」  魔王と男勇者、女勇者は一時的に戦いをやめることにした。  魔王は世界の敵だが、魔王の目的はあくまで世界征服。世界を滅ぼすことではない。このまま女神様が引きこもって雨が降らず、世界が滅んでしまっては元も子もないのだろう。  なんとかして、女神様が外に出てきたくなるようにするしかない。 「よし、まずは僕が女神様の興味を惹くよ!」  異世界転生してきた元日本人の男勇者は、自分たちの国に伝わる神話を知っていた。洞窟の前で楽しいパーティをすれば、女神様も天岩戸よろしく外に出てきてくれると思ったのだ。 「女神様!女神様!美味しいご馳走があるよ!美味しいお酒もあるよ!外に出てきてよ!」 「嫌じゃ!ご馳走も酒も食べ飽きてしまったわ!もっと楽しいものを紹介せい!」 「ぐぬぬぬぬぬ」  残念ながら、失敗。 「フハハハハハ!単純すぎる勇者め。女神は退屈がすぎて引きこもったそうじゃないか。ならば、我がもっと面白いものを女神に教えてくれよう!」  今度は魔王が、部下たちを引き連れて洞窟の前に居座った。そして、イケメン魔族と美女魔族に、華やかなミュージカルを披露させたのである。 「女神よ!女神よ!どうだ、華やかであろう?楽しそうであろう?外に出てきて雨を降らせよ!」 「嫌じゃ!イケメンも美女も見飽きてしまったわ!神々の舞台で散々似たようなものを見たのだ。もっとゾクゾクするものを紹介せい!」 「ぐぬぬぬぬぬ」  魔王も失敗。  その間、女勇者はひそかに女神様の噂を調査して回っていた。そして二人の失敗談を聞くやいなや、これだ!と閃いて作戦を実行したのである。  友人の少女達をかき集めて、勇者の家にこもり、何か作業をしていたと思いきや。 「これで完璧よ!私が女神様を引っ張り出してみせるわ!」  彼女は何かを手に、洞窟へ突撃した。  すると、今まで興味なさけだった女神様が、突然黄色い声を上げて喜びだしたのだ。 「きゃあああああああああああああ!こ、これはああああああああああっ!!」 「どう?面白いでしょ?素敵でしょ?女神様はきっとこういうのが好みだと思ったのよ!」 「最高じゃ!最高じゃ!妾はこれがもっと見たいぞ!」 「合点承知!女神様が雨を降らせてくれるなら、もっともっとみんなと作ってみせるわ!」  無事に、女神様は外に出てきた。そして雨を降らせてくれ、世界の危機は回避されたのだが。  果たしてどのような手品を使ったのやら。気になった男勇者と魔王が尋ねると、女勇者はそれはそれは素晴しい笑顔で言ったのだった。
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