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「まあ、立場的にはやっぱり?僕が女房だよね。総理の右腕の官房長官?みたいな?
それに、いつだって僕が大河に愛される方だしね。僕らが愛し合う時だって…ほら。」
そう言って碧斗がまた俺に甘えてきた。腕を絡めてからだを俺に擦り寄せておねだりしてきた。
こういう時は大概、俺に抱いてほしい時だって知ってる。
こうやっていつも碧斗は見境なく、どこでも俺に甘えてくる。誰の前でも、どこでも。もちろん奏太の目の前だって。こうやって俺を煽ってくる。
俺に愛をぶちこまれたがって体全体でこうやって俺を求めてくる。
「ねぇ。ギュってして。」
いつもみたいに碧斗がそう言いながら俺の首に腕を絡めて甘えてくる。
それを奏太がニコニコして下から俺たちのそんな姿をじっと大きな目で見つめている。
「ほらね。パパはいつもそうやってタイガパパに甘えるんだから。」
って、奏太はいいながら嬉しそうに見てる。奏太から聞こえてくる朗らかなメロディが碧斗の耳を擽る。
「いいだろ?奏太。大河は僕のものなんだから、奏太、僕の大河を取らないでよね。」
碧斗は時々、マジな顔をして、自分の息子である奏太にライバル視してそう言う。そして奏太の前でも平気で俺にキスをしてくる。
「別に取らないよ。タイガパパが、パパのものなのは僕もよくわかってるから。」
「じゃあ、パパたち今から愛し合うから奏太はお庭で遊んでおいで」
冗談とも本気ともわからないような顔で碧斗が俺に顔を擦り寄せながら奏太にそう言うと、さも奏太がハイハイ、しょうがないなぁとでも言いたげな顔を向けてくる。奏太の方が一枚うわてだ。
そうやって少し呆れた顔をしてこっちを見てくる奏太から聞こえてくるメロディはいつも穏やかだ。
「明日はお休みだし、これから菊乃にご本を読んでもらう約束してるんだ。僕だって忙しい。明日まで会えないからね。」
そう言って本をトートバックにつめると、奏太は部屋を出ていった。
奏太は、俺たちが思うよりもずっと大人だ。いろんなことを実はわかってるんじゃないかって気がしてる。
目の前の二人の男がこうして愛し合ってることも、普通に理解し、普通に受け入れてくれてる。
奏太がいなくなった寝室に、なめまかしい二人の吐息やあえぐ声が響く。
こんな日は、奏太は菊乃の部屋で夜を過ごし、なんでもない顔をして朝、部屋に戻る。ベットの上で目を覚ましたばかりの、気まずそうにしてる裸の二人のパパに向かって平気な顔をして奏太はおはようの挨拶を交わす。
幸せ一杯の二人のパパの顔を見る奏太の顔は今日も幸せそうだ。
こんな時は奏太の耳に、実は幸せなメロディが二人から溢れでて、こっちまで溢れ返るほど流れてきている。
奏太の耳にも幸せなメロディが届いているそのことを碧斗はまだ知らない…。
それがたとえ世間には受け入れがたいことだったとしても、一番近くにいる息子の奏太が、二人の一番の理解者でいてくれている気がしている。
こうしていつも俺たちの溢れんばかりの愛に囲まれながら、奏太は幸せにすくすくと育ってくれている。
この二人のパパたちに愛されながら…。
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