運命の歯車

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 いつもの碧斗はこんなに乱暴じゃないし荒っぽくない。  そもそも碧斗は自分からこうして求めてくることなんか今までなかった。  いつもはミキが碧斗を丁寧にもてあそび誘惑し、ゆっくりと碧斗を堪能してから碧斗の喜ぶことをしてあげて碧斗を満足させてあげていた。  そうやって、ミキが碧斗を抱いてやる…。  それなのに…。  今日はなんだか一方的で、なにか、激しくぶつかってくるみたいに。  碧斗は少しイライラしながらミキを激しく乱暴に抱いた。  事は性急だったし、早く快楽だけを得て、早く終わらせたがっているようにさえ感じた。  だけどその顔はなぜか悲しげで、切なそうで、苦しそうだった。  何がどうかといわれたら具体的にはわからないけど、今日の碧斗はそんな印象だった。  そして、一度もそんなことなかったのに…。  今日は避妊具をつけなかった。  碧斗にしては珍しく。というか。  初めてのことだった。  碧斗の心には、その日はそんな余裕さえなかったように感じた。  彼はことを終えると、死んだように眠ってしまった。  あの日の夜。  そうやっていつものようにミキから誘われた碧斗はいつものように会って、いつものように体を重ねた。  ミキと碧斗はそういう体だけの関係。  気持ちの無い関係なのはミキもわかっている。  でもミキはそれでもよかった…。  碧斗は大河みたいに複数の女性と関係を持ったりしないし、碧斗にとってはミキが唯一のそんな関係だったから。  なのに…。  なんだか、あれから。  碧斗の様子がおかしい。  ここ最近のそのそっけない態度にミキは妙な胸騒ぎがして、碧斗の異変を感じていた…。  確かにあの日の碧斗はなにかが違った。  二人が最後に会った日のあの碧斗はやっぱり少し様子がおかしかった。  いつものようにミキと抱きあいながら、碧斗はミキを初めて強引にあつかった。いつもはそんなことがないのに。 「なにかあった?」 「べつに。」 「なんか、いつもと違う。」 「そう?」  ベットでの会話を思い出しても特に何も探ることなんかできなかった。  碧斗とミキが喧嘩をした記憶もない。  いつも通り会っていつも通り別れた。 あの日、碧斗に何があったの? *  ミキは連絡をしても返事の来ない碧斗にただ不安を募らせていた。  毎日のように一緒にいたのに。  もうひと月近く会ってない。  不安が重なり気持ちは最悪だ。  心なしか体調まで悪く感じる。  ミキは何度連絡しても返事を断ってくる碧斗に、取り敢えず会いたいとそう告げた。 『いつなら会える?』  そんなメッセージに突然返ってきた返事は。 『もう、ミキとは会わない』  その一言だった…。  なんで…。  それをみてミキはじっとしてなんかいられなかった。
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