真壁家の跡取りとその嫁

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真壁家の跡取りとその嫁

 高級なヨーロッパ調のテーブルやソファーやシャンデリアなどの家具が並ぶこの広くて天井の高いリビングは、それだけでなんとなく緊張感がある。  重い空気のなか、向き合いながらどれくらい時間が過ぎただろうか…。  腕組みをしてさっきから黙ったまま言葉も発しない碧斗の父、伸彦がまた何度もため息をつく。  この同じような光景は昼間オフィスでもみた光景だ。  家に帰ってからも、また同じような重い空気に包まれている。  碧斗はさっきから目を閉じ、自分と対話しているかのようだ。  ミキはみんなのその表情を上目遣いで代わる代わるみては誰かが何かを言うのをただ静かに待っている。  自分のその決意は変わらない。  どちらにしても子供は産むと決めた。たとえ一人でも、育てていく。 碧斗によく似た我が子の顔を見たい、今はそれだけが唯一の願いとなっている。  そして、この子がいることで、碧斗の心ををなんとか繋ぎ止めることが出きるのではと実は淡い期待をしている。 「とにかく。」  伸彦が重い沈黙を破った。 「今日、ミキさんとのことは社のもの達に知られてしまった。  ミキさんが碧斗の子を妊娠したことが事実なのであれば、それについての憶測やいろんな噂も上がることになるだろうし。  ミキさんが碧斗の子供を産むという以上、認知せざるをえない。仮にミキさんが一人で育てると言ったって、碧斗にも責任があるわけだし、認知して養育費だって払うことになる。そうなればいずれは他人に知られてしまうことになる。  碧斗は将来、会社を継ぐ立場だ。 このまま適当な噂だけが一人歩きしたら、会社のイメージを汚すことになりかねない。だから…。お前達は、とりあえず早々に籍を入れなさい。」 「ちょっと待ってよ、父さん…。 だから、僕たち別れたんだって…。」 「黙れ碧斗。この人のお腹にはお前の子供がいるんだろう?」 「そう…だけどさ…。」 「そうだけどなんだ? 子供を作っておいて父親になりたくないなんて言わせないぞ。  もう、お前達だけの問題じゃない。」 「………。」 「別れるにしても、一旦籍を入れて、結婚の形を取ってからだ。その子のために。その子はいずれ、うちの跡取りになるんだから。」 「え?なんだよそれ。跡取り?」 「そうだ。 だから、もうお前らだけの問題じゃないってことだ。」 「産むかどうかもまだ決まってないのになんだよ、勝手なこと言って。」 「え?あたしは産むよ?一人でも育てる。」 「僕には…」 「なんだ」 「だから、その…ミキじゃなくて」 「お前のプライベートをとやかく言うつもりはない。お前がいま誰を好きだろうととやかく言うつもりはない。」 「……」 「しかしだ。」  碧斗は視線を足元に落としグッと唇を噛み締めてうつむきながら耳だけは父親のほうに向いている。  静かに次の言葉を待つしかなかった。  少しだけ妙な間があった。  その後…。 「どうせ、あいつだろ。金髪に青い目の…」
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