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「ミキと僕、もう、別れたんだ…。
その直後に子供が出来たことが分かった。ミキは産むって聞かないし。
親父はその子を跡取りにすると言って聞かない。
その辺ちゃんとしなかった僕にも責任がある。
子供のためにも形だけ、籍を入れようということになった。
確かにそうだよな。
形だけでも一旦は夫婦になれってさ。子供の将来のために。
大河と付き合ってることはもう、親父も知ってたよ。
それをやめろとは言わないけど、子供の父親として子供を引き取ってちゃんと育てるのが交換条件だって言われた。」
急にこんなことになって久々に集まってくれた親友たちに、こんなおかしなタイミングで知らせる羽目になった。
「でもカミングアウトする手間、省けたじゃん。」
あっけらかんと大河はそう言いはなった。
「俺たちのこと許してくれたなんてさ。お前の父ちゃんすげえな。」
こんな時でも大河はポジティブ思考だ。
「僕のマンションに大河が住んでることも、僕たちの関係も、全部知ってたよ。
怖すぎだろ。
自分の親父がこんなに怖い人だなんて知らなかった。」
「まあ、こうなった以上、言われた通りにするのがベストなんじゃない?」
誠也も恒介もウンウンと頷く。
「僕は別れるつもりないよ?大河と。」
「ミキはなんていってんの?」
「ミキは子供のために形だけでも良いからって。大河と今まで通りの関係を続けても良いから、自分を妻として受け入れてほしいって。ちゃんと籍だけはいれてほしいって」
「そうだな。子供のためにも、碧斗はちゃんと父親として責任を果たさないとな。」
「わかってるよ、そんなこと…」
お焼香を済ませたあと、四人で久しぶりに集まって、そんな話をした。
大河がもっと違う反応をするかと思ったけど、案外あっさりしたもんだった。
*
喪中だったので結婚式はしなかったし会社に御披露目なんかをするタイミングを失くした。
だから二人は挙式を執り行うことなく、ひっそりと籍だけいれる形となった。
ミキは仕事を辞めた。
そして、真壁家に住まいを移した。
戸籍上二人は夫婦となった。
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