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週末になると碧斗は書斎と称する碧斗のマンションに向かう。
そこには彼の愛しい大河が待っている。大河はあの後もそのまま碧斗のマンションに住んでいる。
仕事だと言って毎週そこで二人で過ごすことくらい、ミキもわかっていた。
それでも生まれてくる子供のために、見て見ぬふりをする。
仕事場だと言う位置付けだけど、それだけじゃないってことは理解している。
大河が碧斗にとって、結婚した今でも特別な存在なのは知っていたし、それが友達以上の関係だってことももちろん理解していた。
繋がってるのは心だけじゃないんだってことも。
それをわかった上で籍をいれた。
生まれてくる子供のために。
今までだってそうだった。碧斗はいつも気まぐれだったけど。決して愛してるとは言ってくれなかったけど。他の女の子を誘うんならミキを誘うよ、って。いつもそう言ってた。
碧斗にとって世の中の碧斗を愛する女性のなかでは、自分が一番だと思っていた。それでいいと思っていた。
だけど、碧斗の中の一番は女の自分じゃなかった。
自分よりも大切な人だと選んだのは、女じゃなく、男の大河だった。
碧斗の幼馴染みで親友だった大河だった…。
大切な人が出来たから、もう、ミキとは会わないと言われた時はどうしていいかわからなかった。
ライバルがそこら辺の女の子だったら、恨んで終わったのに。
自分の顔や性格がその子より劣ってたんだって、諦めもついたのに。
相手が男の大河じゃ、勝負にならない。
だけど。
勝てるものが一つだけあるとしたら。それはこのお腹にいる子だ。
大河に碧斗の子供は作れない。
碧斗を失うことになることがこんなにも自分にとって大きな事だと今初めて知った。
運命のいたずらで、このタイミングで子供が出来た。
もしかしたら、これでなんとか碧斗を繋ぎ止められるかもしれないと思った。碧斗の心も体も、時がたてば自然と自分の物になっていくかもしれないとさえ思えた。
__だって、この子の親なんだもの。私たちは夫婦なんだもの。
ミキはそんな微かな希望を胸に抱きながら、この屋敷に足を踏み入れた。
けれどそんな考えは甘かったと知る…。
あれから碧斗の父親の指示通り、平日は碧斗は実家に帰ってきて、ミキと住むようになった。
マンションは碧斗の仕事場としてそのまま残したまま。
そこに今でも大河が住んでいる。
そうして週末になると、碧斗は仕事にかこつけて碧斗の所有するマンションに向かい、週末をマンションで過ごす。
今も相変わらず碧斗と大河の関係は続いている。
碧斗が子どもの親になるために籍を入れ、ミキと戸籍上の夫婦になった今も。
その心が大河だけを向いているのはわかっている。
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