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引き合う二人
男四人、互いを親友と呼ぶ。
小学生の頃からの幼馴染みで腐れ縁。
名前の通り誠実で、優しく真面目、賢く純真な心の持ち主で、それでいてイケメンなのに本人は全く自覚の無い『誠也』
四人のなかではいつも兄貴分、頼りがいがあって、堅物で、真っ直ぐで、実直で、一見クールだけど情が深く、人の心を読めて懐が深い『恒介』
外国の血が混ざっているから髪の毛は透き通る金髪で青い瞳にほりの深い顔立ち、中性的で美しすぎるのにその性格はいつもどこかふざけてばかりで、みんなにいい顔をしたがる愛されたがりの『大河』
弟キャラでアイドルみたいに可愛く、甘えん坊でわがままで寂しがりやの癖に、本当の自分をうまく表にだせない。だけど気持ちに素直で正直でちょっとめんどくさい『碧斗』
四人は子供の時からいつも一緒だった。お互いかけがえの無い存在で親友同士。
碧斗にとってこの四人でいる時に聞こえてくる 穏やかな”和音“が子供の頃からとても心地よかった。
今までだってそうだったし、そしてこれからもずっとそうだと思っていた。
ごく当たり前に四人で過ごした。そしてこの先もそのはずだった。
だけど…。
二人の関係がそこからちょっとはみ出した。
碧斗と大河。
それは親友以上の関係として…。
男同士の二人は、その一線を越えた。
友情だと思っていたものがいつしか愛情にかわっていて。
お互いそれに気づかないまま大人になり、ある日気がづいた。
お互いの気持ちに…。
親友の誠也の引っ越し祝の帰り道…。
お互いに大人になってまた一人。恒介に続いて今度は誠也が、こうして自分達の友情以上のかけがえの無い伴侶と出会い、将来連れ添う存在ができた。仲間が自分から離れていくようなそんな気がして、大河が寂しさにうちひしがれていた。
そんな時は決まって大河から悲しい音色が聞こえてきていた。
碧斗にしか聞こえないメロディ。大河から聞こえてくる切ないメロディ。それが胸にいつも刺さり心をえぐった。
だから多分、その心の隙間に足を踏み入れた。
その悲しみのメロディをはなつ大河と、それを受け取ってしまった碧斗が、お互いに向き合った時、二人の間に新たな想いが生まれた。
引っ越し祝いの日に二人はまたケンカをした。なぜかお互い気になる存在でついつい喧嘩になる。
そうやって寂しがる大河の心の扉の隙間を先にこじ開けたのは確かに碧斗だった。
だけど。
互いに開いたその心の扉の前で二人が向き合った時、その開いた碧斗の心の扉に、自ら飛び込んできたのは大河の方だった。
二人は激しくぶつかり合い、砕け合った。その奥の、お互いに密かにしまっていたその奥底にあったものに触れ合い、いつしか二人は知らないうちに、互いを求め合っていたことに気付いてしまった。
互いを確かめ合い、求め合い、そしていつしか二人の気持ちは絡み合い溶け合っていた。
激しく喧嘩をしたあと、お互いのそんな気持ちに気づいてしまった。
碧斗は自分でもそれが鬱陶しいくらいに大河のことが気になってしかたがなかった。
いつも繊細で傷つきやすい碧斗をほっておけない大河は、その気持ちが、お互いのそんな存在が、ただの友情だけではすまなかったと知ってしまった。
お互いがお互いをこんなにも求め合う存在だなんて。それがこんなにも満たされる存在だったなんて。あの時まで、誰が想像してだろう。
それは、自分たちでさえも。
その時、二人のメロディが折り重なって新たな美しい和音になった。
碧斗にしか聞こえない音色。
二人で過ごす時間を流れる幸せな音色が二人の心を満たした。
あれから大河は碧斗のマンションに入り浸っている。
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