愛の巣

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愛の巣

 二人はマンションで一緒に暮らし始めた。  ただの友達同士なんかではなく、お互いにかけがえのない存在、愛し合う恋人同士として…。  碧斗は大河を心からから、それは、どうしようもないくらい愛している…。  二人がこの先も普通に二人で碧斗のマンションで幸せな生活を共にしていくことを何も疑わなかった。  そのはずだった…。  だから、その時は、この幸せがずっと続くもんだと思っていた…。  高校まで、実家で暮らしていた碧斗が大学に入学したタイミングで父が与えたマンションに一人で住むようになった。  一人暮しと言っても、世間一般の俗に言う一人暮しとは少し違った。  碧斗のマンションは会社を経営する父の名義で、学生が一人暮しするレベルのものではなかった。  毎日お世話をする使用人の菊乃が訪れ、洗濯や掃除、料理など家事全般をする。  送り迎えは時間になると運転手付きの高級な車が横付けされる。  碧斗の専属の運転手は碧斗より二つ年上の恭弥だ。  碧斗が学校に向かったあと、合鍵を使って菊乃が部屋にやって来て身の回りのことを手際よく片付ける。菊乃は碧斗が生まれた時からお世話をしているため、好きなものも嫌いなものも何でも知っている。  それは、知らなくてよいことまで…。  帰る頃には家はスッキリと整えられ、まるで生活感を感じさせない無機質なホテルのような佇まいで帰ってくる碧斗を待つ…。  神経質で他人が立ち入ることを極端に嫌う碧斗は、ここにはこの使用人たちと、親友の三人、そして、碧斗の側に長年寄り添って来たミキ以外が入ることは無かった。  人の好き嫌いがはっきりしている碧斗は、自分が心を許す人以外とあまり深く関わらない…。  表面上はそれなりに適当に当たり障り無く関わることはあっても、それ以上立ち入ることも、立ち入られることもしない。  就職した今でも、そのマンションは碧斗の書斎として仕事をする場所という位置付けになっている。  そこにいつしか大河が転がり込む形で、二人で住み始めた。  相変わらず菊乃が世話をしに足しげく通って来るのは就職してからも変わらない。  碧斗の親友たちは何かあるとここに集まるたまり場になっているし、何かある度にそこで騒いだりしている。  碧斗の自宅や、マンションと職場の行き来も相変わらず恭弥が車で送迎している。  だから、すぐに恭弥にも、その事がバレた。
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