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奏太がもう少し大きくなって、物事を理解出来るようになったら、全てを話してみよう。
奏太に反対されるかもしれないし、変な目で見られるかもしれない。
でも。
大河のこんな溢れるばかりの愛情を奏太がちゃんと受け取れば。
きっと気持ちは伝わるはず。
大切にしてきた時間はきっと裏切らない。
だから。
それまで惜しみ無く愛情をそそぎ、お互い家族として愛しあい、支えあって行こうと決めた。
親として、母親の母性みたいなものは、きっと男でも女でも変わらない。
血が繋がってなくたって、親として愛情をそそいでいけば、いつかは父親みたいに思ってくれるんじゃないかって信じてる。
二人の父親がいたっていいじゃないかって、笑って話せたらいいなって。
そんなこと夢見ながら。
月日が経って奏太がもしも母親に会いたいと言い出したら、会いに行かせるつもりだ。
例えその時、なんで別れたのかって聞かれたとしても、きっと嘘はつかない。
子供には子供の人生があり、僕たちには僕たちの人生がある。
世の中は多様性の時代だ。
いま、追い風が吹いている。
俺が作った紙飛行機が空を飛ぶのに、最高の条件だ。
好きな色紙で作った紙飛行機を好きなように折り目をつけて好きなように飛ばそう。どんな形だっていい。
互いにそれ認めあい、自分らしく生きていければそれでいい。
そんな僕らは、今日も二人でオムツを替えて、哺乳瓶でミルクを作る。
「ねえ、大河?」
「あ?」
「会社での秘書の仕事に慣れてきたらさ…。」
「ん?」
「僕のうちで、僕の専属の執事もやらない?恭弥のポジションあいてるんだ。ちょうど」
「なんだよ、いえでも俺をこき使う気か?俺、召し使いかよ」
「そうじゃないよ。だって、家でも一緒にいられるじゃん。夫婦みたいにさ。一緒にこうして毎日奏太の世話が出来るじゃん。」
「なんだよ、結局俺にそうやって奏太の世話させてこき使う気だろ?」
「だって、奏太の世話したいだろ?
ここのマンションで週末だけ会うよりさ、いいだろ?そっちの方が。」
大河はその事について、まだなにも言ってこない。
でも、そのうちそうなっていくような気がしている。
だって、奏太を見つめる目が、近頃本当に父親みたいで、愛おしくてたまらなそうだから。
全てを見通すような天使のそのすんだその瞳がこっちを見て笑った。
その愛らしい口が、大河の方を見てパッパ、と言った。
大河は奏太にパパと呼ばれた気がした。
はじめて奏太が発したその言葉を僕たちはきっとずっと忘れない。
カーテンを開けると、空は青く、雲ひとつ無い快晴の空に飛行機が飛んでいく。
よく晴れた空は飛行機雲も見えない。
碧斗の周りでは、今日も大河と奏太が奏でる幸せなメロディが聞こえている。
それはまるで僕たちの再出発を喜んでいるかのような幸せな音色だった。
顔を合わせれば口喧嘩ばかりしてた二人が、いつの間にかくっついて。
今日も三人で綺麗な和音を奏でている。
おしまい
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