エピソード2~二人のパパ~

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エピソード2~二人のパパ~

「パパとタイガパパは、どっちがお嫁さんなの?」  奏太が俺に聞いてきた。  奏太は俺をタイガパパと呼ぶ。 「なんだ?それって。」 「だってさ。パパとタイガパパは愛し合ってるから夫婦なんでしょ?  夫婦ってさ、二人が愛し合って結ばれて旦那さんのところに愛するお嫁さんに来て夫婦になるんだって。沢山いたなかで選ばれた一人だけがお嫁さんになって夫婦になるんだって。 先生が言ってた。」 「へー。そうなんだ」 「僕のうちはパパが二人でさ。 だからさ。どっちがお嫁さん?パパはタイガパパを愛してるってこのあいだ言ってたよね。だから、夫婦だよね? パパたちはさ。」 「えー。難しいな。どっちかな。」 「二人は愛し合って結ばれた夫婦なんでしょ?ねぇ。どっちがお嫁さんなの?」  奏太が真剣な顔をしてそう俺たちに聞いてきた。 「旦那さんはお嫁さんを大事にしてあげなきゃいけないんだって。いつも優しくしてあげたりして、たくさんお嫁さんを甘えさせてあげないといけませんて、先生がそういってた。」 「碧斗のお嫁さんてさ、お前のママのことだろ?いつも会いに行く奏太のママ…。」  俺が思わずそういうと、碧斗が苦い顔をした。  しまった…。そう思ったけどもう、出てしまった言葉は口に戻らない。 「僕のママは別のお家でお仕事してるから、ここのうちのお嫁さんじゃないよ。それに、ママには愛するキョーヤが居るんだから、パパはママの愛する人じゃないんだよ?その事、タイガパパは知らないの?パパが愛してるのはタイガパパだって、知らないの?」  俺に平気で奏太はそんなことを言ってきた。 「あー、そうか。そうだった。間違えたわぁ…。」  奏太にそういって俺も渋い顔をした。碧斗と二人で見合ってため息をつく。 「元々ここに住んでたのはパパだから、ここにあとから来たタイガパパがお嫁さんなのかなあ。」 「あー。そうだ。そうかも。な?」  俺がそうやって適当に返事をすると…。 「でもさ、お嫁さんは旦那さんに色々してお世話してあげるんだって。  だけどさ。パパがいつもタイガパパにお片付けとか、色々お世話してあげてるから、パパの方が、なんか、お嫁さんみたいだよね。旦那さんみたいに優しく抱きしめてあげるのは、いつだってタイガパパの方だし。パパはタイガパパに甘えるばっかりで、パパの方がやっぱりお嫁さんみたいだよね。」  奏太のやつ。見てないようで、よく見てんな…。  二人がイチャつくところを、最初の頃は隠してた。だけど、それもなんか違う気がして。最近では堂々と奏太の前で仲いいところを見せつけてやるようにした。奏太はそれを嬉しそうな目で見てくるから。ごく自然にそうなった。  大概、決まって甘えてくるのは碧斗の方だし、キスをせがんでくるのも、抱きついてくるのも、いつも碧斗の方だった。俺はその気持ちに精一杯応える。  
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