僕の兄のような人

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 搭乗手続きは済ませた。搭乗の時間を待っている間、恭弥がボクのすぐ隣で僕のスーツケースを抱えながらその上にタブレットと手帳を広げて出張先の日程なんかを確認しながらなにやら熱心に目を通している。  気がつけば周りは出発を待つ人でこみあっていた。付近の長椅子もいつの間にか人で溢れてる。  僕が昔のそんなことを色々思い出しながら恭弥の顔をじろじろみるもんだから、さすがの恭弥も、気まずそうにこっちをみた。 「やっぱり、何かわたくしに、いいたげですね。さっきから…。」  恭弥は手を止めると、僕の顔もみずにそう言った。 「恭弥はさ…。」  僕は少しためらってから。 「いつから僕らのこと気づいてた?」  少し上目遣いで恭弥の顔をうかがいながら聞いてみた。 「はい?なんですか?唐突に。」 「だからさ、僕と大河がこうなったことだよ」 「んー」  少し考えるような仕草をして恭弥は遠くの天井の方を見てからこっちに視線を戻した。 「かなり前から。かな。子供の頃…?」  恭弥はまた手元に視線を落とし、顔をあげずに手帳に目を向け、ペラペラとめくりながらそっけなくそう答える。 「え、そんなはずないよ。 だって、最近だもん。  僕たちがお互いの気持ち知ったの。  大人になってからだよ?僕が就職してから。ほんの最近だよ?ベットの上でお互いの気持ち確かめ合ったのもさ。」  急にそんな話をしたのでさすがに恭弥が驚いて顔を上げた。あわてて周りを気にしてる。  ビックリした顔を向ける恭弥に、僕はわざと襟元を下げて、みせてやった。 「初めて大河と寝たのだって、つい最近だよ?実は昨日の夜もだけどさ。だから寝不足。ほら…。出来たて。」  首もとに跡が残ってる。大河の印。なんで恭弥にそんなの見せたくなったんだろ。僕はそんな恭弥の反応を見て楽しんでる。 「んっっ」  恭弥は思わず咳き込んだ。 「そういうのは結構です。 早くしまって下さい。」  恭弥は声のトーンを下げて周りを気にしながら僕の襟元を隠すような仕草をした。 「もしかして色々想像しちゃった? なんか、顔赤くなってる?」 「やめてください。セクハラです。」 「大人だもんね、こんなの大したことじゃないか。」 「僕だってそういう知識くらいあります。僕だって女性と付き合った人の一人や二人いますから…。」 「そんなの知ってるよ。恭弥はかっこいいし頭もいいからモテるだろうね。」  恭弥がモテることなんか、一番身近な自分がよく知っている。 「私のことは良いですから。」 「僕が大河とのその気持ちに気づく前に恭弥が先に気づいてたなんて、すごいよ。だけど、ホント最近なんだよ?大河とキスしたのもそれ以上も…」  やっぱ、恭弥がやきもち妬いたりするわけ無いよね。そんなのわかってたけど試してみたかった。  別に、ただそれだけ。小さい頃みたいに、恭弥に僕だけを見て欲しいなんて、もう今は思ってないけどさ…。  今はね…。  でも、少しは…さ…。 「だから、やめてください。そう言う生々しい話は…。」 「恭弥はやっぱり僕の事、何でもわかってるってことだよね。」 「そんなことないでしょ。」 「だって僕より僕の事わかってるもん。」 「自分の事って意外と自分じゃ分からないもんです。案外、一番近くにいる人の方がよく見てて分かってる。」 「ふーん」 「ボクはさ。毎日あのマンションで暮らしたい。大河と。」 「ミキさんとの…。今後どうするおつもりですか?」 「そのうちちゃんと別れるよ。ミキとボクは愛し合ってたわけじゃない。  ミキだってその事わかってるし。  ミキがそう言ってきたんだから。それに。僕は大河と違って二人同時になんて器用なこと出来ない」 「大河さんの方の派手だった交友関係は…?相手は女性だけじゃないと噂で聞きますけど?」 「そんなの、知らない。別に僕は束縛する気はないよ。大河はそういうやつだから」
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