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そうしてやるのが今の俺の最大の喜びであり、生き甲斐であり、ここに居る意義であり、俺がこの世に生きる意味な気がしているからだ。
俺は今、心からこの目の前の碧斗を、大事に思っている。
そしてそれと同じくらい、俺の愛するこいつのDNAを引き継いだそっくりな顔したやつがこうして俺にも甘えてくるから。俺はもう、俺自信よりも今はこいつのことが大事になっている。
だから、この奏太も幸せにしてやりたい。だけどわかったんだ。
そのためには、まず俺たち自身が幸せじゃないといけないんだってこと。
俺たち二人が幸せで、お互いを愛し合っていることが、こいつにとっての幸せになるんだって、最近わかった…。二人が仲良くしていると奏太も笑ってる。二人が喧嘩をすると、奏太も悲しい顔をする。本当にあいつの生き写しみたいに。あいつのクローンかなんかみたいに。気持ちも心もシンクロして。連動しているみたいだ。
近頃、碧斗をほったらかして、奏太にばかり構っていると、碧斗がやきもちを妬いてくる。
「僕よりもそんなに奏太が大事?もしかして、僕よりも奏太のことを愛してる?」
なんて、くだらない拗ね方をしてくる。
だから、俺は言ってやるんだ。
「いつだって碧斗が一番だよ。
そんな碧斗にそっくりな碧斗の子だから、奏太も大事なんだ。」ってさ。
「奏太が大きくなって僕みたいに成長したらさ、大河は年老いた僕よりも、若い奏太を愛したりするんじゃないの?」
なんて、真剣な顔してやきもちを妬いてくる。
「ばか言ってんなよ。」
そう言い返す俺は、そんな風にいつまでたっても俺に夢中な碧斗がとてつもなく愛おしいし、俺だって同じくらい碧斗に夢中なんだ。
だから、奏太は奏太。奏太は碧斗の息子だから、俺にとっても奏太は俺の息子だ。
碧斗は俺にとっての唯一無二の存在だから。
たとえ顔が似ていたって。
奏太は碧斗じゃない。
何年たっても、俺と碧斗は、俺と碧斗のままだ。
「奏太が大人になったらさぁ。」
「ん?」
「会社を奏太が無事に引き継いだらさぁ。」
「うん…。」
「僕たち二人で、どこかでのんびりと暮らそう。」
「そうだな。奏太が結婚でもして、ちゃんと社長になったらな。」
「そうだね。二人で頑張って子育てが一段落したらさぁ。畑でも耕して。ゆっくり二人で過ごそうよ。」
「ホントにそしたら俺たち、隠居した老夫婦だな。男二人だから夫の夫夫か。」
「そうだよ。そうしよう。でもさ。老夫婦だと、おばあさんはやっぱり僕の方なのかな。夫の方のおじいさんはタイガだもんね。きっと。」
「なに言ってんだか」
「今のうちに沢山お金を貯めて、ちょっとした駅前とかの小さなビルでも買って賃貸物件にしてさ。シェアハウスみたいなやつとかもいいよね、二人で大家さん業なんて、どう?」
「それ、いいな。学生寮の寮長と寮母さんみたいなのとかいいよな。」
「そしたらどっちが寮母さん?寮長さんと寮母さん。奥さんが寮母さん、かな。やっぱり。僕らだとどっちかな。
お世話するから、僕が寮母さんかな。」
「お前はいつでも俺に甘えてくるからお前が寮母さんだろ。おれ、一番偉い寮長。」
「でも、仕事の内容的に、経営に携わるなら、社長はやっぱり僕の方だよね。絶対。大河は秘書だし。だから秘書は、女房的な立場?」
「ていうかさ。お前ら、やっぱり。親子だな。同じようなこと聞いてきて。頭の作りが一緒だよな。どっちが妻とかどっちが嫁さんとかさ。同じ次元の話してる」
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