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お昼休みには、窓際の私の席でお弁当をひらく。奈々のお手製弁当は、基本おかずが少ない。
身体が弱い奈々のママに、負担をかけないように手作りするが、いつも時間切れのようだ。
「ほら、ハンバーグあげる。私はダイエット中だから」
奈々のお弁当箱へハンバーグを移動させると、食いしん坊の瞳がいっそう輝く。
「ハンバーグ……だから真織、好き〜」
ずっと見ていられる。You Tubeの咀嚼音動画なんか目じゃない。奈々の幸せそうな顔を見ていると、私も笑顔になるんだよ。
「奈々は笑っているとかわいいかも」
「えっ?斜め45度の憂い顔もイケますけどぉ?」
盗み聞きしていたまわりの男子も、調子に乗って囃し立てた。
「鈴代って、なんか小動物っぽいな?チワワとか?」
「チワワじゃなくて、ハムスターじゃね?」
「相棒の佐藤はチーターかなぁ」
「黒ヒョウ……ピッタリだろ?」
ハイ、ハイ……。私の見た目は肉食獣ですよ。目、切れ長の最上級。しかもいつも仏頂面。
うるさい外野をシッシと追い払い、揺れるカーテンを押さえる。
肉食獣じゃなきゃ、奈々を守れないでしょうが……。あんた達みんな、中学時代から奈々狙いなんだから……。
「真織~、文芸部の見学ね、一緒に付いてきてくれないかな?」
「私は部活はパス。しかも文芸部なんて無理だし、興味ないし」
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