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付いていったらおしまいだ。中学の時も奈々にお願いされて、やりたくもない演劇部に入部させられた。
必死に抵抗したけど、文化祭で王子役をやらされ、しばらく後輩女子達からキャーキャー言われた。
「ひとりで行きな?奈々の魂胆はわかっているのだ」
ヒラヒラと手を振り、さっさと教室を出る。奈々が大げさに絶望の雄叫びをあげても、私の足は止まらない、止めてはいけないのだ。
「それでね、部長がとってもいい人でね、入部を決めてきたの!」
私の部屋のラグの上にペタンと座り、入部してきた文芸部について爆裂ひとりトークの奈々。
喋り過ぎて咳込んでいる。
「落ち着きなよ。今、飲み物取ってくるから」
冷蔵庫から麦茶をだして、奈々専用のくまちゃんカップに注ぐ。小学生からだ。ずっとこのくまちゃんカップは奈々専用だ。くまの絵が薄くなって所々剥げてきても、他のカップを使う気になれない。
「麦茶しかなかった……」
「真織んちの麦茶は好き!」
一気に飲み干して、唇を手で2回拭う。変わらない奈々の癖。
「でね、でね、部員が1年生3人だけなの……3年生が卒業してから……」
「奈々を入れて全員で何人いるの?」
「だから、3人……」
「よく廃部にならないね?」
ジト目って言うのか、うるうる目って言うのか、奈々が私を見つめている。祈るように両手を合わせて。
耐えろ私、奈々のうるうる目に負けるな。
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