フィルター越しに好きだった

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「わかったよ……」  結局私は奈々には甘い。こうやって何度お願いを聞いてきたかわからない。 「真織もきっと好きになると思うよ、文芸部」 「なるわけないよ。私は奈々の付き人だから、何もしないからね!」  伸びた前髪の隙間から、喜ぶ奈々を見ている私は、今、どんな顔をしているのだろう。仏頂面で誤魔化しても、頬が緩んでくる。口角も上がる。  好きでもない文芸部。  大好きな奈々。  私の答えなんて決まってる。    6年生の修学旅行。夜はお決まりの女子トークに、ボルテージは上がっていく。何度も見回りに来た担任を誤魔化して、最後に奈々の告白タイムになった。 「2組の荒川君……かな」  足が速くて運動会のヒーローだった荒川は、4年生の時に奈々と同じクラスだった。 「奈々んちょは荒川君が好きなんだ!お似合い、お似合い」 「奈々んちょなら、付き合えるんじゃない?」  なぜだか私は悲しくなって、頭から布団をかぶって女子トークに背を向けた。  奈々が荒川を好きだなんて知らなかったし、不快だった。 ──アラカワナンテ イナクナレ  それからの私は、荒川に意地悪ばかりしてたっけ。自分の気持ちを持て余しながら。 ──オトコノコハ スキジャナイ  みんなと違う道が、私にはぼんやりと見えていたのかもしれない。
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