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奈々が誰かを好きになった。
奈々が高坂を好きになった。
奈々が私以外の人を好きになった。
奈々がまた男を好きになった。
「当たり前じゃん……奈々にはそれが普通なんだから……」
私は──。
私は奈々が好き。
奈々しかいない。
たぶん、ずっと前から奈々を愛していた。
幼なじみのフィルターも、親友のフィルターも、同性のフィルターも全部利用して。
それに隠れて愛してた。
胸に抱きしめているのは古いテディベア。初めて奈々から貰った誕生日プレゼント。
ずっとお友だちでいてね
「ごめん、奈々……私は友達だけじゃあ満足できなくなってた……」
次の日、私は普段通りに振る舞った。だけど部活だけは行きたくなかったから、奈々に見つからないように教室を出る。
──でも、私の片思いで終わりそう……高坂君、好きな人がいるらしいの。
私はどうすれば良いのだろう。大好きな奈々の恋を応援するか、邪魔をするか。
私が奈々に告白する?
雨が頬に降りかかった。自分のどす黒い涙のように感じて、慌てて手で拭う。2回、奈々の癖。
本格的に降り出した雨に濡れながら、私はノロノロと家に帰った。
「真織~、最近部活に来ないのは私のせい?」
「なんで奈々の?……そうじゃなくて、小説とかマジで書けないのよ……」
「書く?私だって文芸部で小説とか書けないし、ポエムが精一杯だよ?」
顔を見合わせて微笑み合う。私はまだ、親友の立ち位置は手放していない。ズルい女だ、私は……。
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