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「真織は、高坂君の事嫌い?」
「高坂?好きでも嫌いでもないけど……少し羨ましく思う時はあるよ」
奈々の心に居座る高坂が羨ましく、妬ましい。正直、消えてしまえと思ったりもする。
「知ってる?高坂君、真織の事が好きなんだって。私、振られちゃった……」
風で揺れるカーテンを思わず掴み、ギュッと握りしめた。高坂が誰を好きになろうと知らないし、関係ない。私は奈々しか見ていないのに。
「奈々……私は……」
「うん、真織は高坂君の事が好きじゃない。それくらいわかるよ……」
「そうじゃなくて!」
何が多様性の時代だ。何がマイノリティだ。
都合の良い言葉だけを生み出しても、現実はそう容易くない。失恋した奈々に私が出来ることは、親友のフィルター越しに慰めるだけだ。
「……奈々、高坂は女を見る目がないよ。奈々じゃなくて、私だなんて……もう世紀末だよ」
これでいい。
泣き笑いの奈々をそっと抱きしめた。奈々の柔かい髪を震える指先で撫でてみる。
甘くて 苦くて とっても苦しい
私が選ぶ道は、これからもこんな痛みを伴うのだろうか?
ただひたすらに、純粋に、自分の気持ちをぶつける事ができないのだろうか?
「高坂なんかより、私の方が奈々をずっと好きなんだからね!」
フィルター越しの告白は、奈々に届かない。
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