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友人から、亡くなった祖父の家にあった家具や電化製品を引き取ったので、一人暮らしの部屋に運ぶのを手伝ってほしいと呼ばれた時の事だ。
昭和の雰囲気を感じる木造アパートに数人の男たちが集まった。僕と同じように応援を頼まれた同じ大学の友人たちだ。アパートの前には一台のハイエースが停められていて、その中から古い電子レンジや掃除機を次々と六畳程の部屋へと運んでいく。
やがてハイエースが空になると、ハイエースと入れ替わりに一台の軽トラがアパートの前に停められた。その荷台には、高さ八十センチ程の本棚が一つだけ載せられている。
友人が言うには、無料で家電や家具を譲る代わりに、この本棚も一緒に引き取って欲しいと言われたそうだ。
貯金や節約が趣味だった友人は、無料で色々手に入ってラッキーだ、なんて、少々不謹慎な事を言っていた。
それ以来、友人は大学に姿を現さなくなった。とは言っても、SNSで連絡は取れているし、行方不明になった訳でもない。部屋から一切出て来なくなったのだ。
最初は周囲の人たちも、放っておけばそのうち学校にも来るだろうと考えていたが、一週間が経ち、流石に心配になった何人かがアパートまで様子を見に行ったという。
どうだったか聞くと、みんな口をそろえて、「あれはヤバい」「行かない方がいい」なんて言うだけで詳細を話そうとはしなかった。
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