祖父の本棚

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 翌日、友人の部屋で、本に埋もれた状態の友人の遺体を見つけた。  もしかしたらと思って遺体の周辺を確認してみたが、あの本は無かった。  あの本を探さないと。  僕は本の海をかき分けながら部屋の中を進む。ボロボロになった漫画、広辞苑、自己啓発本やライトノベル、どれも違う。あれも違う、これも違う。そもそもどんな本を探しているのかさえ分からない。表紙は?タイトルは?分からないけど、それでも探さないと。探してあの本棚に収めないと。いや、駄目だ。探しちゃいけない。見つけてはいけない。あれ、なんで見つけちゃいけないんだっけ?分からない。探さなきゃ……こいつ邪魔だな。  友人の遺体を玄関に運んだ。こいつも苦労したんだな。どうやってもあの本を探さずにはいられないのに、絶対に見つけてはいけない。だから大量の本で部屋を埋め尽くしてあの本を隠したんだろう。余計な事しやがって。違う、そんな風に思ってない。むしろ感謝してるんだ。あの本は絶対見つけちゃいけないから。てか、あの本ってなんだよ。分からない。でも探さなきゃ、いやだから、なんで探してるんだ?分からない。どうしてこんな事になった、きっとあの本棚のせいだ。あの本棚と目が合ったから僕は……。  近隣住民から異臭がすると警察に連絡があり、アパートの一室でその部屋に住んでいた男性の遺体が発見されたらしい。その後、どういうワケか、その部屋にあった物はすべて持ち出されて焼却処分されたという。  彼が友人の様子を見に行くと言ってあのアパートに行ってからもう二週間程経ったが、彼の姿を見た人は居ない。
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