プロローグ

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プロローグ

「重婚は、出来ません!」  私は生まれ育った建物を飛び出した。  着替えだけを持って外へ、外へと駆け出していく。  きっと”ここ”の価値観を持ったままでは生きていくのは苦しい。だけど、私はここにはもう居られない。  私は、物心つくころから”ハウス”と呼ばれる独自の神を信仰する共同体の所有する建物に居た。30人程度が共に住むハウスの中で、私は「聖女」として日々奉仕活動を行なうことで、日々食事をいただくのだ。同じハウスで暮らす妹達に誇れる自分であるように、ハウスを取りまとめる司祭さまのお導きに従うように、生きてきたのに。  限界まで削り取って神に捧げる生き方は性に合っていた。最後の一滴まで絞り出すように自分を他者に捧げて、他者から認証してもらうのは嬉しい。 (だが、教祖さまの愛人になるのは別だ)  先日告げられたのは、18歳になった私を教祖様の15人目の妻にするということ。  私は今日、司祭さまに別れを告げて返事も聞かずに飛び出した。
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