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「どこに行こう、あてもない」
ハウスだけが拠り所だった私には、頼れる人も場所もない。夕暮れに染まっていく街の中で、一際夕焼けの赤を取り込む建物に目を奪われた。
「異教の神だ」
ハウスに居た頃、あれは悪教の神の城だから絶対に近寄ってはならないと口酸っぱく言われていた場所に足を向ける。
薄暗い夕方の教会に入ると誰も居ないように見えた。ステンドグラスに夕日が反射して、多色の影を作る。そのあまりの神々しさに一筋の涙が流れた。
(この世界で悪だと教えられてきたものが、こんなにも私の心を揺さぶるなんてーー)
私が信じてきたものは、その全てが誤りだったのだろうか。
「大丈夫?」
誰も居ないと思っていた教会の長椅子に、いつの間にか小学校高学年ぐらいの子供が座っていた。柔らかな雰囲気の男の子はまるで教会の端に掲げられている天使の絵画のようだ。
だから自然とこう口に出していた。
「私、道を間違えたのかもしれなくて」
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