0人が本棚に入れています
本棚に追加
理想の曲作りを追い求める人生は、突如フィナーレに……
最後に作曲した曲は、何かを急くような高揚する旋律だった。
まるで、私がまさに今載せられた救急車のサイレンのように。
病院へ運ばれる中、程なくしてそのメロディは物悲しい旋律へと移調していく。
ふと目を開けると遠ざかっていく救急車の姿があった。
『ああ、行くな……私を置いて行かないでくれ……!』
そう願い救急車の後を追うが、サイレンの音が溶ける様にレクイエムを奏でて去っていった。
――私の魂は、生き急ぐ肉体に追い越されてしまったのか……。
―名も無き作曲家の追走劇 幕切れ―
最初のコメントを投稿しよう!