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婚約パーティーで華族たちは「これぞ美談」と語り大いに盛り上がった。
そして、正清と愛子は最後の招待者を見送り宴が終了となった。
まだ日は明るく15時であった。
「愛子、渡したいものがある。控室で待っていて下さい」
正清がそう伝えると、愛子はコクンと頷いた。
すっと田代が正清の側に寄る。
「瀬田さまのご接待は本宅でなさいますか? それとも、銀座のレストランを予約しておきましょうか」
「是非、家にきていただきたい。今日はゆっくり愛子と語りたいこともあるだろうからな」
「承知しました。では、お車でお待ちしております」
「田代、先に瀬田さまを家までお送りしろ。私はこれから二時間ほど時間が欲しい」
「……まだ日も明るいですが?」
先読みした田代が疑問を投げかける。
「今日でお手付き禁止令は解禁だろ?」
正清はじろりと田代をねめつける。田代がはっとして、ゆっくりと頭を下げた。
「ごゆるりと。では、二時間後にお迎えにあがります」
「頼む」と正清は機嫌よく控室に向かった。
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