あなたと話がしたいから 〜茶座荘の日常〜 4

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「今日は、お兄さんに会いに来た、ってことで良かったんだよね?」 「はい。たまたま駅ビルでお兄ちゃんを見かけて。会うの5年ぶりとかですよ。追いかけたくもなりません?」 「だったらその場で声をかければいいだろ。なんで後をつけるようなことまでして来たんだよ」  お茶を持ってきたお兄ちゃんが私を睨む。 「だって、お兄ちゃん1人じゃなかったし、ゆっくり話なんか出来なさそうだったから」  落ち込む私を見て原田さんが助けてくれた。 「窪田さん、わざわざ顔が見たくて追いかけてきたのよ。そんなに邪険にしなくても……」  ここは原田さんを味方につけたほうが都合が良さそうだ。   「原田さん、分かってくれます? お兄ちゃん、昔はもっと優しかったんですよ。勉強だって教えてくれたし……」 「分かった分かった。で、今日は何しに来たんだ?」  仕方なく、という感じでお兄ちゃんはこっちに向き直った。 「だから、お兄ちゃんに会いに来たんだって」 「じゃあ、目的は達成したんだな。もう帰れ」  身も蓋もない言葉に拗ねることしか出来ない。 「せっかく来てくれたんだからご飯くらい一緒に食べていかない? 私ももっと麻佑さんと話したいし」  またまた助け舟を出してくれたのは原田さんだった。 「えー、いいんですか? じゃあお言葉に甘えちゃおうかな」 「麻佑! いい加減にしろよ……」  お兄ちゃんが立ち上がったタイミングで、さっきお兄ちゃんと一緒にいた2人が入ってきた。この家の持ち主である佐倉(さくら)浩介(こうすけ)さんと仕事仲間の安嶋(あじま)橙吾(だいご)さん。2人も私の味方をしてくれ、お兄ちゃんは折れるしかなかった。  原田さんが夜ご飯の準備をするべく台所に向かったので、私も手伝おうとしたら、お客様だから、と追い出されたのでお兄ちゃんの隣に座る。 「お兄ちゃんもここに住んでるの?」  佐倉さん曰く、この家はシェアハウスとのこと。仕事仲間で共同生活しながら仕事をしているらしい。 「ああ、浩介くんは何でも屋をやってて、俺はその社員の1人としてここにいさせてもらってるよ」 「何でも屋? どんなことやってるの?」 「引っ越しの手伝いとか、イベントの運営とか。まあ、俺は力仕事というより機材関係が多いかな。引っ越しだと配線周り整えたり、新しい家電の選別したり、イベントは音響とか」  そう言えばお兄ちゃんは昔から機械の知識が豊富だったし、電機メーカーに勤めていたこともあったんだっけ。 「彼女はいないの?」 「別にほしいと思ってない」  仕事の話は流暢だったのに、恋愛の話になった途端喋らなくなってしまい、そのまま夜ご飯になってしまった。
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