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夜ご飯は餃子だった。大皿にきれいな焼き目のついた餃子が円を描いている。原田さんが下準備をして佐倉さんと安嶋さんが包むのを手伝ったらしい。だけど、中には大きさが違ったり形が歪なものが散見された。
「これなら量が多くてもすぐ作れると思ったんだけど、浩介が作ったのだけは分かりやすいよね。全然揃ってないし」
「うるさいなー。愛那が具を作って焼いたんだから味は間違いないんだしいいじゃん」
原田さんと佐倉さん、安嶋さんは高校の同級生らしく、気心知れてる感じだ。だからこそ何でここにお兄ちゃんがいるのかが不思議だった。お兄ちゃんは高校のときも基本1人でいることが多かったから。だけど……
「え、でも俺は浩介くんの好きだよ。大きいのと小さいので味わいが違って面白いじゃん」
「だよね、保人さんは分かってくれると思ってたんだよ」
佐倉さんとお兄ちゃんが楽しそうに話しているのを見ると、ここの人達とは仲良くやっているんだと安心する。
「へえ、窪田さんの家って旅館なんだ」
みんなで餃子をつつきながら話題は私の話になった。私の家は昔から旅館をやっており、お父さんで5代目だと聞いている。
「麻佑さんが旅館継ぐの?」
安嶋さんの一言に私は曖昧に肯いた。だけどお兄ちゃんはきっぱりと言い切った。
「俺は接客業向いてないからな。そういうのは麻佑の方が華もあるし適任だよ。亮平くん来てくれるんだろ?」
亮平くん? みんなの視線が私に向く。
「亮平さんは幼馴染みで、家が料亭をやっていたんですけどちょっと前に店を畳んじゃったんです。だから、私と結婚して、うちの板前……ゆくゆくは料理長になって旅館を支えてもらう予定です。親同士が決めた結婚って感じですよ」
言ってからちらっとお兄ちゃんの方を見たけど、特に気にする様子も見せずに餃子を頬張っていた。
「そっか、家を継ぐとなると結婚相手も自由には決められなかったりするんだね」
原田さんがぼそっと呟いた。だけどお兄ちゃんはそれにもとくに反応はしなかった。
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