あなたと話がしたいから 〜茶座荘の日常〜 4

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 ご飯を食べ終わり、後片付けを手伝っているとお兄ちゃんがやって来た。 「麻佑、そろそろ出ないと帰りのバスなくなるぞ」  まだ帰りたくなくて後片付けをしていたので、手を止めずに続ける。 「麻佑、聞いてんのか?」 「まあ、いざとなったら浩介に送ってもらえばいいじゃない。お酒飲んでないでしょ」  お兄ちゃんの声がまた厳しくなったので原田さんが助けてくれた。あれ、そう言えば、みんな餃子にはこれだとビールを飲んでいたけど、確かに浩介さんはお茶だった。 「あの……もしかして浩介さん私がいるからお酒飲まなかったんですか?」  だとしたら申し訳ない、と思って聞いてみたけど、そうではなかった。 「浩介は飲めなくはないけど弱いから。普段からあんまり飲まないのよ」  それを聞いてホッとしたのもつかの間、お兄ちゃんが私の手を掴んだ。 「これ以上は迷惑になるだろ。さ、帰るぞ」  だけど、私はその手を振り払う。 「やだ。ねえ、今日泊まっていっちゃ駄目?」 「駄目に決まってるだろ。ワガママ言うな」  2人で睨み合っていると、今度は浩介さんが間に入ってくれた。 「まあ、もう時間も遅いし。麻佑さんさえ良ければ、部屋はあるから」 「いや、そうやって甘やかしてばっかりいるわけにはいかないんですよ。お前もうすぐ結婚するってのに外泊なんてしてる場合か? しかも親父と喧嘩して飛び出してきたんだろ。心配してたぞ」  もうすぐ結婚するって話も、お父さんと喧嘩した話も言ってなかったので、びっくりした。 「その話、誰から聞いたの?」 「板前の権堂(ごんどう)さん。彼とだけは辛うじて繋がりがあるんだよ。お前が急に俺のところに来るなんておかしいと思って聞いてみた」  良かった。権堂さんならお父さんとの喧嘩の原因までは知らないはずだ。 「まだ家出た目的が果たせてないの。お父さんには電話しておくから、今日1日だけ、お願いします」  真剣な顔で頭を下げると、誰も何も言えなくなってしまった。おそらくこの場の決定権はお兄ちゃんにある、それがみんなの共通認識なのだろう。 「……分かった。家にはちゃんと連絡入れることと、明日には帰ること、これが条件だ」  お兄ちゃんはそれだけ言っていなくなってしまった。
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