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「凶、入れるか? 普通。
駄菓子のクジに」
と倫太郎が言い、
「中吉で強盗に服奪われたんだよね?
凶だったら、なにが起こるんだろうねえ」
と高尾は楽しそうに笑っていた。
斑目から凶のクジを渡されそうになった部下の人は、ひっ、と叫んで、受け取らない。
床に落ちたそれを壱花は拾い、
「だ、大丈夫ですよ。
ほら、悪いクジは木に結びつければいいって言うじゃないですか」
と言ったが、倫太郎が、
「何処に木があるんだ」
と余計なことを言う。
まあ、確かに。
だが、早くどうにかしてあげなければっと思った壱花は、そのクジを押しピンで、木の柱に止め、パンパン、と柏手を打った。
「よしっ」
と言う壱花に、冨樫が、
「いや、なにもよくない気が……」
と言い、
「どんだけ雑なんだ……」
と倫太郎が言う。
「いやいや、スピード感、大事だろ」
と斑目が言うのを聞きながら、壱花は、ふと思い出していた。
強盗の人たちが言っていた住宅街の駄菓子屋のことだ。
なにか不思議な感じだったんだけど。
今度探してみようかな?
そう思ったそのとき、斑目が、
「よし、倫太郎、引け」
と倫太郎にクジの箱を向ける。
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