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「こちらに来るでない、壱花よ」
あまり口を開けずに発しているのに、驚くくらいよく通る声だった。
「壱花、いつもすまないな。
よく私の世話をしてくれるお前に、これをやろう」
晴明は手に白く薄いモノを持っていた。
紙のように見えるそれは彼の手の中で、クネクネと踊っている。
え?
まさか、それをくださるとおっしゃってるんですか?
なんか怖いんですけどっ。
壱花がそう思った瞬間、晴明はパンと扇を広げ、その白いモノを扇ぐ。
それはすごい勢いで、ヒュッと壱花に向かいやってきた。
ひーっ、と壱花は顔をかばうように前に手を突き出し、目を閉じた。
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