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「壱花、あれ持ち歩いてんのか?」
仕事中、壱花が社長室を訪ねると冨樫もいて、倫太郎がそう訊いてきた。
「はい、大事にここに」
と壱花が四つ折りにして入れていたヒトガタをポケットからゴソゴソと出すと、
「折り畳むな……」
と倫太郎が眉をひそめ、冨樫もバチ当たりめ、という顔をする。
「いや、いざというとき、使えるように肌身離さずと思いまして」
「いざというときって、いつなんだ……」
と冨樫に問われ、
「……いつなんでしょうね?」
と壱花はその白いヒトガタを見た。
腕組みして、壱花の手にあるそれを観察していた倫太郎が問うてくる。
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