迷い込んだ世界

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「そういえば、顔つき違うけど、似てますね。  まあ、あの人の方が温厚そうだったけど。  俺、たぶん、あんたのお父さんにこの服もらったんですよ」  ……あの人、一体、なにしてんだ、と冨樫は思う。  やはり生きてはいるようなのだが。  もはや、人間とも思われず。  たぶん、本人は人の世界へ帰りたいとも思っていない。  だから、高尾に顔をやり、この男に服をやったのだろう。  なにもかも、人にくれてやるな、と冨樫は舌打ちをする。  そのせいで、今以上に、父が『人』から遠ざかっていく気がしたし。  自分達への未練のなさを見せつけられている気がしたからだ。
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