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「学生時代の仲間で呑んでたんですよ。
安い居酒屋で」
と男は語り出した。
「リストラされたり。
安月給だったり。
なんかショボイ話してて、みんなで。
店を出てもまだ話しながらウロウロしてるうちに、ひとりふたりと消えていきました」
頭の中があやかしで染まっている冨樫は、どういう意味で消えていったんだろうな、と怯えたが。
彼の仲間が消えた理由は、冨樫が想像しているような意味ではなかった。
単に、酔いながらも帰巣本能に従い帰った者。
その辺に倒れ込んで寝てしまった者。
吐きそうになって公園のトイレに駆け込んだ者などいろいろだったらしい。
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