迷い込んだ世界

10/11
前へ
/105ページ
次へ
 懐かしいなと思いながらも、そちらに行かずに、涼しい川の方に向かい、ずんずん歩いていってしまったらしい。  そして、気づけば、見知らぬ住宅街に迷い込んでいたのだという。 「もう帰ろうかなと思ったとき、また駄菓子屋が見えてきたんですよ」  夜中に開いてる駄菓子屋が住宅街にあるのか? と冨樫は首をひねった。 「そのとき、ふと、さっき入りそびれた駄菓子屋のことが気になって。  おい、ここ入ってみないかって友だちに言ったんです。  二人も、いいな、懐かしいな、とか言ってそこに入ったんですが。  駄菓子屋なんだから、ばあさんがやってるかと思いきや、メガネかけたスーツ姿のクソ真面目そうな男がひとりでやってたんですよ。  まあ、そうですよね。  深夜だから、ばあさんなら、もう寝てますよね」 と男は偏見を述べる。
/105ページ

最初のコメントを投稿しよう!

688人が本棚に入れています
本棚に追加