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「――なにか知らない山の中で目覚めたので」
後悔そっちか。
「じゃあなって別れたあと、どうやって、その山中までたどり着いたのかわからないんですけど。
入った覚えのない山の見知らぬ巨木に寄りかかって寝てたんですよ、俺」
そこで、あなたとそっくりな人に出会ったんです、と男は言った。
「その人気のない山の中に、いきなり人が現れたんです。
ニコニコとして感じのいい人でした」
いや、人気のない山の中に、いきなりニコニコして現れる人、怖くないか?
「その人は俺に訊いてきました。
『こんなところでなにしてるの?』って」
冨樫は心の中で、恐らく自分の父であろうその人物に向かい言う。
――いや、あんたこそ、なにしてんだよ。
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